
映画監督 山崎貴|『ALWAYS 三丁目の夕日』『寄生獣』『ゴジラ-1.0』などで知られる山崎監督が、映画監督を目指すきっかけとなった名作を鑑賞。Mini LEDバックライトドライブ搭載の「BRAVIA 9」やブラビアシアターシリーズの音響環境での映画視聴を通じて、原点となった劇場での記憶を辿りながら、これからを語った。
撮影 / 田中庸介(AFLO)
「人生を変えるほど中学2年のとき、友達と『未知との遭遇』を観に映画館に行きましたね。僕は『ジョーズ』を観てなかったし、スピルバーグ監督がどのくらいの映画を作る人か分かっていませんでした。だから、アダムスキー型UFOに誰かがさらわれて帰ってくるみたいな話じゃないかと軽視していたのです。そんなふうにハードルが低くなった状態で観に行ったところ、人生を変えるほど凄まじい映画に出会ってしまったというわけです。終わったときはもう、映画の中に出てきた基地の人たちと同じですね。とんでもないものを見てしまったと、ただ呆然としていました。
やはり巨大UFOが出てくるシーンです。そのシーンまでにもすごいUFOを見せられていたところ、桁違いの巨大UFOが現れる。暗い中でバババッと光が点いた瞬間、その巨大さに圧倒されます。デビルズタワーの壮大さが表現されてきた後に、それよりも遥かに大きいUFOが出現するという演出。本当にショッキングでした。
それから、宇宙人が出てくるシーン。巨大UFOの出現だけで本当に感動して満足していたら、まさか宇宙人が降りてくるとは。実は、本物の宇宙人じゃないかと疑ったくらいです。それまで宇宙人というと、人が被り物を着た宇宙人しか見たことがありません。初めてアニメトロニクスの、人間と体型が全然違う宇宙人を観て驚きましたね。心のどこかで、これはアメリカのどこかで本当に起きたことじゃないのかと感じるほどリアルで。宇宙人とハンドサインで会話するのですが、自分まで意思疎通できた感じがしました。
「初めて観たときとこれまでに、いろんなメディアでいろいろな作品を観返すことはありました。でも、映画館で観たときのような感動を覚えることはありませんでした。しかし、このBRAVIA 9とシアターシステム では、あのときの驚きを再び味わえました。
スクリーンで観た当時よりもバージョンアップしていますよね。4Kでダイナミックレンジも広くなっていて、スクリーンよりも光自体が強い。音響も、あの頃の劇場よりも進化しています。いままでなかったものを初めて観たという驚きは、当時の方が強かったでしょう。しかしそれ以上のコンテンツ力が備わっています。だから、初めて観たときと変わらないレベルの衝撃を受けることができました。
BRAVIA 9は、あらゆる光がリアルに光っているように見えるところが素晴らしい。しかもそれが暗い中でも分かります。ダイナミックレンジが狭いと絵空事に見えてしまうものですが、光がしっかり表現されるから本物感があります。
色が付いている光も強いですね。かつて観たシーンもこんなに眩しかったかな?と思うくらい明るく感じましたし、光が漏れてくる中でも暗い部分がつぶれず、ちゃんと階調を感じました。
そうそう、ある映画で登場人物が涙を流すシーンがあったんです。光の中のシーンでしたので、これまでは気づいていませんでした。BRAVIA 9では表情がクリアに見えるので、ひとりひとりの感情が伝わってきます。
ところで、こういったモニターには黒い縁がありますよね。そして、僕らが黒だと思って見ている映像は、実はグレーなのです。だから普通のモニターだと、黒い縁と黒い映像に差を感じます。しかしBRAVIA 9は、映像の中の黒とモニターの縁の黒がつながって見えました。それほどしっかりと、黒が黒として表現されています。
それぞれの音の位置がはっきりしているのがすごい。重低音も、ずっしりと感じます。とある映画でUFOと音でやりとりするシーンが圧巻でしたね。最初は探り合いながら、そしてだんだんとコミュニケーションがとれていくプロセスがとてもいい。高い音のメロディで交信していたら、ものすごい重低音で返してきた。その音でガラスが割れますが、そのときの重低音が本当に大事です。そこに圧倒的存在があるということが、ビジュアルだけでなく、音でも伝わってきますから。これまで、劇場以外ではこの感じは味わえないと思っていました。
家庭でこれだけの体験ができるということは、僕らは遠慮しなくていいということ。ダイナミックレンジのすごく広い音と映像を作っていけば、それが家までちゃんと届く。それはとても素晴らしいことで、この表現力を見たら、僕も新しい表現を試してみたくなります。
「これからは映像をあの頃、『スター・ウォーズ』がやって来るというので、みんなワクワクしていました。ところが、なかなか上映されず、アメリカの公開から1年くらい待たされたと記憶しています。その前哨戦のように『未知との遭遇』が上映されたのです。UFOの表現の素晴らしさに、本当に夢中になりましたね。これは本当にアメリカで起きた出来事なんじゃないかと錯覚するくらい衝撃的で、僕にとってモダンVFXの最初の洗礼となりました。その後『スター・ウォーズ』が上映され、こういった仕事に携わりたいという気持ちがさらに強くなってきたのです。
ソニーの本社を見学したとき、棚いっぱいのエミー賞を見ました。1つか2つでもすごいことなのに、ずらっと並んでいたのです。そのとき、映像業界に多大な貢献をしている会社なんだなと改めて思ったものです。世界の映像業界の人たちは、ソニーがやってきたことをよく分かっていますし、ソニーの技術によって多くのことが成し遂げられてきたことを理解しています。映像関連の技術については、僕も広く浅く勉強しています。その引き出しを増やすことで、ストーリーが求める表現と最新の技術がリンクする瞬間ができる。わくわくするし、絶対面白いことになりますよね。
もちろん劇場で観る映画がいちばん好きですが、それにとらわれ過ぎると、新しいことができなくなる。いまテクノロジー的に興味があるのは、現実としか思えないバーチャルな映像です。その中で、映画でやっているような表現ができたら、どんなに人をびっくりさせられるだろう。そんなことを考えています。
これまでは、かなり細かいところまで気を使って映像を作っても、2次利用でメディアになったときに劣化せざるを得なかった。いろいろと削ぎ落とされた状態で出回ってしまうのです。しかしこれからは映像を、オリジナルのスペックのまま家庭などへ送り出せる。これは本当にありがたいことです。一方、劇場で観てほしい気持ちも強いので、家でも観られるというのは困ったことでもあります。これからは、家庭の視聴環境と戦っていかなければならない。でも、それによって技術が進み、映像体験がさらに素晴らしくなっていくのではないでしょうか。
今後、映像の作り方自体もがらりと変わる可能性がありますが、唯一変わらないのは、面白いか面白くないかということ。そこだけは絶対ぶれません。テクノロジーをうまく取り入れながら、面白いものをどんどん作っていきたいですね。
「映画業界をまさか何度も見た映画で、中学時代の気持ちに戻れるなんて考えてもいなくて。こういうことがしたかったから、この仕事を選んだのだと初心に戻れて、本当にありがたかったです。やっぱり僕は映画が好きだなあと思いました。
映画ファンの皆さんに作る側から伝えたいのは、極力いい環境で観てもらいたいということですね。届けたいものを100%届けた上で、それを面白いとかつまらないとか評価してほしいと思っていますので。
映画業界を目指す人たちには、いろいろな手段を使って映画を作ることは、とても楽しいことだと伝えていきたいですね。いい仕事であると感じられる環境を作っていきたいのです。例えばハリウッドでは、映画を作ることが誇りを持って語られる。そういうふうに日本の映画界もなっていくべきです。そのために、旗を振っていきたいと考えています。
PROFILE山崎貴(ヤマザキタカシ)1964年6月12日生まれ、長野県出身。2000年に『ジュブナイル』で映画監督デビュー。主な監督作に『ゴジラ-1.0』のほか、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ、『STAND BY ME ドラえもん』シリーズ、『永遠の0』『海賊とよばれた男』『DESTINY 鎌倉ものがたり』『アルキメデスの大戦』『ゴーストブック おばけずかん』がある。

西岸良平の人気漫画を山崎貴監督が実写映画化。1950年代の東京下町を舞台に、個性豊かで人情味あふれる住民たちが織りなす人間模様を描く。
Blu-ray&DVD発売中 発売元:小学館 販売元:VAP
©2005「ALWAYS 三丁目の夕日」製作委員会
©西岸良平/小学館

生きて、抗え。焦土と化した日本に、突如現れたゴジラ。残された名もなき人々に、生きて抗う術はあるのか。
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©2023 TOHO CO., LTD.

何をやらせても冴えない少年のび太の前に現れたのは、22世紀から来たネコ型ロボット・ドラえもん。のび太の悲惨な未来を変えるため、ドラえもんはのび太を幸せにしない限り、22世紀に帰れない。
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©2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会
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