ソニーイメージングギャラリー 銀座

柳下勉 作品展 窓  - 記憶にない思い出 -

 学生の時にガストン・バシュラールの言う『詩の中には日常的な水平に流れる時間とは違う、時計で表されないような“垂直な時間”がある』という言葉を見つけて凄く感動しました。それって写真のことじゃないかと。

 自分は4歳の時に父親を亡くし、記憶にある父は写真の中だけにしかいない。その写真を見る度に自分にとって垂直な時間を感じたというか、いくらでも伸び縮みできる時間があると思ってその言葉に救われていました。

 だけど他人が見たらそれはただの昔の写真でしかない。だったら他の人が見ても“垂直な時間”が感じられるような詩的な瞬間を写真で作れたらいいなとずっと思っていました。

 そこで20代から、つい最近までの写真を見直して旅の時間の中で撮影した『旅の途中』、日常をとらえた『日々』、スタジオでのスティルライフ『長い瞬き』の3部構成で作品をまとめてみました。

 4年前に制作した作品集ができあがってページをよく眺めてみると思いもかけずに記憶にない父に会いたいという本音が分かりました。

 当時は時間の興味からページをめくり、水平な時間から垂直な時間への展開を試みたつもりでした。表現としては夢に似た白昼夢に身体が反応した様々な写真をページの見開きにして、ある変容を期待する試みです。ですから写真展とかまるでイメージがわかずにいました。

 コロナ禍で昔読んで分からなかった本を幾つか再読しました。そのひとつミヒャエル・エンデの『ミスライムのカタコンベ』があります。ミスライムは流刑地、エジプト、大河のイメージ、時が流れる国、つまりこの世。カタコンベは地下墓地。この地下に影にされ落とされた測量士の話。本当に前半のところだけですが…

 彼はよく地下に落とされる前の外の夢を見て、目が覚めるといつも頬には涙に濡れている。仕事に使う白墨を何故か盗み集めて地下の壁にその夢を何度も描こうとする。その絵は彼には不本意な窓の絵にしかならず夢は描けない。しかもその地下には窓という言葉さえない。

あ!このイメージなら自分も写真展ができるかもしれない…..

柳下 勉

作品展紹介動画

全作品紹介

柳下 勉さんギャラリートーク(無観客)
ゲスト:赤城耕一さん、広重隆樹さん、村上仁一さん

柳下 勉(やぎした つとむ) プロフィール

撮影 河内 尚子

所属会員
(協) 日本写真館協会
(社) 日本広告写真家協会
(社) 日本写真文化協会

1956
東京生まれ
1979
日本大学芸術学部写真学科卒業
今井イサオ 萬年社フォトスタジオ 秋元茂
のもとでアシスタント
1983
編集プロダクションにフォトグラファーとして勤務
日本クリエーターズ協会(JCA)発行
COMMERCIAL PHOTOGRAPHY EXPOSED 1 に掲載 (旧姓 窪田勉)
1984
(株)リクルートJ.Jフォトコンテスト大賞
1985
(社)日本広告写真家協会 APA展 奨励賞
足立区千住のポートレートスタジオ、写真館と同時に各企業のPR
コマーシャル、雑誌、アート作品集の撮影を手がける
1999
アートボックスin Japan3 『現代日本の写真.版画』に掲載
2000
(社)日本写真文化協会 フォトコンテスト 年度賞
(社)日本広告写真家協会 『地球と人間−YES.NO』写真展に出品
足立区千住の街のPRに商店主120人の『顔』モノクロ写真展
2001
足立区千住 魚河岸DE写真展
2004
北千住マルイにて銭湯の写真展
2006
東京都写真美術館内カフェでガラス作品の写真展
2013
ギャップ・ジャパン社 TOKYO PHOTO STUDIO GUIDE に掲載
2018
日本カメラ社より写真集 『MATATAKI』を出版
2020
あだちのガンバル企業写真展
足立区で活躍する皆さんを地元の写真館と信用金庫で取り上げてモノクロポスター
に仕上げ。その作品を区役所、商業施設、JR北千住駅コンコースにて約3週間の
巡回展示