ソニーイメージングギャラリー 銀座

©Mitsuhiko Imamori
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©Mitsugu Ohnishi
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©Tomoko Sawada
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©Yurie Nagashima
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今森光彦・大西みつぐ・澤田知子・長島有里枝 写真展 木村伊兵衛写真賞特別企画

第50回木村伊兵衛写真賞 受賞作品展に先立ち特別企画展を開催します。第50回木村伊兵衛写真賞の選考委員を務められ、自身も受賞者である4名の皆さんの新作や名作を選りすぐってご覧いただきます。

今森 光彦(いまもり みつひこ)

選考委員:第48回〜50回(2023〜2025年度)
受賞:第20回(1994年度)

木村伊兵衛写真賞は、私にとって特別な賞だと言える。当時、ワイルドライフ系の写真家は、2、3人受賞しただけだったので、受賞の知らせを受けたときは、舞い上がるほど感動したのを覚えている。内容は、昆虫をテーマにした作品と、人と自然の共存をテーマにした作品だった。受賞以後も、ペースを崩さずに制作活動ができていることを嬉しく思う。近年、写真表現は、たいへん自由になっていきているけれど、私としては、ナチュラルヒストリーの延長上にある新鮮な作品が登場することを期待している。

今回の作品は、「里山」シリーズの第二弾、「にっぽんの里山」シリーズからのセレクトだ。日本中の里山を旅しながら訪ねる試みで、琵琶湖水系を縦軸に見つめる「里山」と違い、日本列島を横軸に眺める視点をもっている。

当初は、日本を巡って100箇所くらい出会えればと思っていたが、次々と候補地が現れ、結局のところ十数年の間に訪れた場所は、340箇所を超えてしまった。あちこち旅をしていて思うのは、里山環境というのは、他者に認めてもらうためにあるのではなく、そこに住んでいる人や生物たちのためにあるということだ。そのことを悟ってからは、肩の荷が楽になり、自分の目だけを信じてシャッターを切ることにしている。

出展作品:「にっぽんの里山」から

プロフィール

1954年、滋賀県生まれ。写真家。琵琶湖をのぞむ田園風景の中にアトリエを構え活動する。自然と人との関わりを「里山」という空間概念で追い続ける。NHKスペシャルの映像詩『里山』シリーズに、撮影監督として参加。一方、世界各国の訪問を重ね、熱帯雨林から砂漠まで、生物と人が生きるあらゆる自然を見聞し取材している。また、自然のかたちをハサミひとつで鮮やかに切り出すペーパーカットアーティストとしても知られる。写真集に『里山物語』(新潮社)、『湖辺』(世界文化社)、『世界昆虫記』(福音館書店)、写真文集に『萌木の国』(世界文化社)、『里山を歩こう』(岩波書店)、写真絵本に『神様の階段』(偕成社)など多くの著書がある。第20回木村伊兵衛写真賞、第28回土門拳賞、第56回小学館児童出版文化賞、第42回産経児童出版文化賞大賞など数多くの賞を受賞。

大西 みつぐ(おおにし みつぐ)

選考委員:第46〜50回(2020+2021〜2025年度)
受賞:第18回(1992年度)

木村伊兵衛写真賞を受賞した年が1992年だったのか1993年だったのか、記憶が朧げになる歳になってしまった。季節の移り変わりの速さに身を任せ、今も同じようにいつもの路上でスナップショットを撮るしかない私だが、写真表現が多様な変化を続けていることに実はそれほど驚いているわけでもない。

数年前から選考委員として任に当たってきたが、写真家がその「現場」でいかに無為な時間と葛藤を繰り返し「表現」することを真摯に問いかけてきたかを念頭に作品を拝見してきた。奇抜なインスタレーションであれ、大画面映像であれ、「こんなのでどうだ!」と脅されたところで世界が劇的に変わるわけもなく、写真を撮ることの蓄積は、自然に人間の記憶の領域に深く入り込み、私たちの歩みを補完していくもの。それは一つの「批評」になりうるものであってほしい。

この賞の未来を考えるということは、当然「写真」そのもののそれに繋がるのだが、「AI」がどうのこうのとかという話では決してないはずだ。

出展作品:EVERYDAY CORNER(2025)

プロフィール

1952年東京生まれ。東京綜合写真専門学校卒業。1970年代より東京の下町や臨海部の風景の変遷、町と人とが織りなす日常と非日常を撮り続けている。1985年「河口の町」で第22回太陽賞受賞。1993年「遠い夏」ほかにより第18回木村伊兵衛写真賞、江戸川区文化奨励賞を受賞。2017年日本写真協会賞作家賞。写真集・ 著書に『下町純情カメラ』『遠い夏』

『wonderland』『川の流れる町で』『TOKYO EAST WAVES』など。映画監督作品に『小名木川物語』(2019年)。東京造形大学、武蔵野美術大学、大阪芸術大学などで非常勤講師、客員教授を歴任。作品収蔵は東京都写真美術館、川崎市市民ミュージアム、日本カメラ財団(JCII)、フランス国立図書館ほか。日本写真家協会会員、日本写真協会会員。ニッコールクラブ・シニアアドバイザー。

澤田 知子(さわだ ともこ)

選考委員:第46〜50回(2020+2021〜2025年度)
受賞:第29回(2003年度)

木村伊兵衛写真賞の受賞は私にとってやっと始まったスタートでした。

賞をいただいた当時、海外での評価に対して日本ではまだ知名度が高くなかったこともあり受賞によりやっとスタートラインに立てた、さぁ、これからだと思ったことをよく覚えています。ニューヨーク国際写真センターの新人賞と同時受賞だったこともあり、それまで評価して下さっていた何人かの方が、これからが大変だと心配して下さっていたこともあたたかい思い出です。そして気がつけばあっという間に受賞から20年以上の時間が経っていました。その間に様々な国でたくさんの人が私の作品に出会い、私自身たくさんの人と出会い世界各国に友人や知人がいます。いつも作品は私の先を走り、私をさまざまなご縁へと繋いでくれます。木村伊兵衛写真賞が50周年を迎えるこの年に、選考委員の1人として木村伊兵衛写真賞特別展に参加できることを光栄に思います。

出展作品:
School Days(2004)
Facial Signature(2015)
ID: Paris(2025)

プロフィール

兵庫県神戸市生まれ。成安造形大学造形学部デザイン科写真クラス研究生修了。現在は同大学客員教授、千里金蘭大学教授、関西学院大学非常勤講師。キャノン写真新世紀、木村伊兵衛写真賞の選考委員をはじめ国内外で審査員としても写真に関わっている。学生の頃よりセルフポートレイトとタイポロジーの手法を使い、作品を通して内面と外見の関係性をテーマに作品を展開している。デビュー作「ID400」が2000年度キヤノン写真新世紀特別賞、2003年度木村伊兵衛写真賞、ニューヨーク国際写真センターのThe Twentieth Annual ICP Infinity Award for Young Photographer など受賞多数。ニューヨーク、ロサンジェルス、ベルギー、パリ、ウィーンなど世界各地で展覧会を開催。出版物は、写真集と絵本。今年度は、アルル国際写真フェスティバルを皮切りに巡回中の 「I’m So Happy You Are Here: Japanese Women Photographers from the 1950s to Now」が6月にロンドン、7月に東京、10月にニューヨークへ巡回。その他には兵庫県立美術館、東京都写真美術館、Hudson River Museum(ニューヨーク)、Isabella Stewart Gardner Museum(ボストン)などで展示。

長島 有里枝(ながしま ゆりえ)

選考委員:第39〜41回(2013〜2015年度)、46〜50回(2020+2021〜2025年度)
受賞:第26回(2000年度)

木村伊兵衛写真賞には、単に視覚的に心地よく既存の美的基準に従順な表現や、AIなどの新技術が生む大量の「アート」とは一線を画しつつ、未来への道標になるような作品に光を当てること、そして「タイパ」や「コスパ」では決して測れない大切なものの存在を鑑賞者に突きつけるようなアーティストの発掘を望みます。

正面に展示した「家族の肖像」シリーズの一点には、写真を始めるきっかけになった祖母、フェミニズムと引き合わせてくれた息子、種を超えた愛を教えてくれた犬の存在が暗喩のように描かれているように思えて不思議な気がします。生きることのままならなさ、激しさと美しさについて、彼らから多くを学びました。

無関係だと思っていた作品同士が隣り合っている。それぞれのイメージだけじゃなく、イメージとイメージのあいだに見出したなにかを眺めることができるのも、写真を面白いと自分が思う理由なのかもしれません。

出展作品:
The Heart(2006)
Rolling Acones(2006)
Coral sings(2006)
ピンクの野生の花(2007)
Untitled from the series Family Portraits(2005)
Gentian(2019)
Clematis#1(2019)
セルフポートレイト(お祭りの日)、エスタバイエ・ル・ラック、スイス(2007/2019)

プロフィール

1973年東京都生まれ。武蔵野美術大学在学中、現代美術の公募展Urbanart#2を経てアーティストとして活動を始める。カリフォルニア芸術大学MFA写真専攻、武蔵大学人文社会研究科前期博士課程修了。写真では第26回木村伊兵衛写真賞、第36回写真の町東川賞国内作家賞を受賞、文芸作品では短編集『背中の記憶』(講談社)で第26回講談社エッセイ賞、『「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ』(大福書林) で日本写真協会賞学芸賞を受賞。近著に『Self-Portraits』(Dashwood Books)、『こんな大人になりました』(集英社)、『去年の今日』(講談社)など。武蔵野美術大学造形学部油絵学科および芸術文化学科客員教授。

これまでの木村伊兵衛写真賞 受賞作品展