日向坂46 金村美玖が写真と言葉で綴る
ランドスケープアートの舞台裏

α Universe editorial team

令和8年4月3日(金)〜5日(日)に開催された都市型フェス「CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2026」。その中のイベントの一つとして行われたのが、日向坂46のメンバー、金村美玖さんの展示企画「記憶の欠片」だ。どのような経緯でこの企画を実施することになったのか、展示作品はどのようにつくり上げていったのか、アートディレクションを務めた株式会社ソニー・ミュージックソリューションズの吉田航と桑ア真里亜に話を聞いた。

●「CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2026」とはソニーミュージックグループを中心としたCENTRAL実行委員会が主催した都市型フェス。令和8年4月3日(金)〜5日(日)に、Kアリーナ横浜、横浜赤レンガ倉庫、KT Zepp Yokohama、臨港パークで開催。横浜の街そのものが巨大なフェス空間となり、海外からも注目を集めるアーティストや、アニメ、テクノロジー等の多彩なエンタテインメントが集結した。●展示企画「記憶の欠片」について臨港パークで開催する入場無料エリア「CENTRAL FIELD」において、写真に造詣が深く、フォトグラファーとして写真展を開催した実績のある日向坂46メンバーの金村美玖さんが、写真と言葉で“記憶の欠片”を表現する展示企画。自身が撮影した写真と、写真から紡がれた言葉が、臨港パークに点在する7つのオブジェクトとともに広がるランドスケープアート。

『ひな誕祭』への思いを表現したオブジェクトが周囲の自然と調和してパーク内に点在

――金村さんの作品展を企画した背景について聞かせてください。吉田:CENTRAL 2026で、臨港パークは「循環」「交錯」といったテーマを掲げていました。モノやコトなど、いろいろなものが循環し、人や体験、アイデアなどが新たに交わることで次へと繋がっていく。そのテーマを意識しながら企画を考えていきました。イベント期間内に開催される日向坂46の7周年ライブ『ひな誕祭』も、「次の未来へ向かう」「積み重ね」など、循環を内包したテーマがあったので相性がいいと考え、臨港パークでのイベントと『ひな誕祭』を連動させよう、というところから企画がスタート。メンバーの金村さんには昨年も『おもむく』という展示企画で写真を撮影していただき、その反響が大きかったため、もう一度金村さんにご協力いただいた形になります。

桑ア:金村さんはソニーのカメラを使って自身の表現を作品にしてきた方です。今は誰でも簡単に写真を撮って自己表現できる時代なので、今回の作品展示を通して、カメラがあれば誰でも自己表現ができることを伝えたいと考えました。その思いものせた作品展示になるように、企画を進めていった感じです。――展示企画『記憶の欠片』の内容を教えてください。吉田:臨港パーク内に7つのオブジェクトを置きました。それぞれのオブジェクトは『ひな誕祭』の1回目から今年行われた7回目まで、1年ごとに金村さんが感じた思いを写真で表現したものです。旅立、成長、挑戦、伝説など、各年のキーワードを写真で表現し、さらにその年に感じていた金村さん自身の思いを言葉にして添えています。

見せ方としては、「循環」というテーマに合わせて、会場となる臨港パーク内を来場者が循環できるようなランドスケープデザインをしています。ランドスケープデザインとは、自然環境と人工物の調和を図り美しく機能的に整える空間デザインです。そのためオブジェクトの形も周囲の自然と馴染むように工夫しました。作品を1カ所にまとめるのではなく点在させることで、自然を楽しみながら作品を巡ることができるのも今回の作品展の特徴です。桑ア:年ごとにオブジェクトの色味や雰囲気がまったく違うので、そういったところも見て回る楽しさに繋がっていたように思います。

細かい部分にまでこだわった多面体のオブジェクト。完成品は宝石のように輝きが詰まっていた

――展示構成や演出面で、とくにこだわった部分はありますか?

桑ア:今回の作品展では、積み上げてきた1年ごとの思いを金村さんにどこまで言葉で表現してもらうか、見て回る人に伝わるようにするにはどうすべきか、というところはバランスが難しく、こだわったところです。吉田:写真と言葉から作品の意味を汲み取って、何を表現しているのか「謎解き」のように楽しんでもらいたい、という意図もありました。桑ア:あえて『ひな誕祭』と連動させていることは伏せて、オブジェクトの1面だけに西暦を入れるなど、雰囲気だけを匂わせました。写真も言葉も直接的ではない表現に、ということは金村さんにも共有していましたし、私たちもそこには気を配りながらつくり上げていった感じです。ファンの方には、何を表現しているのか考えて楽しんでいただきたいと思っていたので、どれだけの方が気づいたのか気になります。――多角形のユニークなオブジェクトにもこだわりを感じますが、どのようにしてこの形に決まったのでしょうか?

桑ア:写真展というとパネル展示をイメージされると思いますが、立体にしたことで臨港パークという気持ちのいい景観に溶け込むデザインにできたと思っています。オブジェクトの高さや形、面の角度など、細かいところまで議論しながら決めていきましたが、最終的に金村さんの写真が入ったオブジェクトを見た時、本当に宝石みたいで。私たちと金村さんで考えた「記憶の欠片」というテーマにもマッチしていて感動したことを覚えています。

吉田:今回の展示のために撮り下ろした写真を多く使っていますが、面の形も様々だったので、トリミングは非常に難しかったと思います。桑ア:この形にしたがゆえに、シミュレーションにもかなり時間がかかりました。平面であれば印刷して並べて、相性やテンション感を探れますが、立体の場合は自分で模型をつくって写真などを貼って、実際にはどう見えるのか、隣り合う写真の相性は悪くないか、といったシミュレーションをしなければならなくて。ずっとカッターを片手に硬い紙と向き合って試行錯誤していました。吉田:桑アはオブジェクトのミニチュア版をつくって、どの面に何をもってくるのか常に悪戦苦闘していて、端から見ていても大変そうでした。

桑ア:軸としたのは、いかに写真がきれいに見えるか、というところです。金村さんには私がつくった模型をクルクル回転させている動画を送って何度も確認してもらい、写真の入れ替えなど、金村さんの思いも反映して調整していきました。金村さんは本当にアーティストで、オブジェクトそれぞれに違いを出すこともしっかり意識されていました。

新しい展示表現にアプローチしたことが来場者に伝わったことは大きな収穫だった

――作品展を終えて、どのような手応えを感じていますか?吉田:ランドスケープデザインとして、会場に7つのオブジェクトを点在させたことで、来場者を分散させ、臨港パーク全体を巡りながらオブジェクトで表現するストーリーを感じてもらう、という2つの目的を両立できたことに手応えを感じています。桑ア:オブジェクトを複数配置したことによって、来場者や自然など、その場にあるすべてが調和して、臨港パーク全体のアートディレクションとしても成立するような展示空間ができたのではないかと思っています。

――来場者の反応で、印象に残っているものはありますか?吉田:ファンの方の熱量がとても高くて、全部の面を撮影している方が多かったことを覚えています。つらい体勢でないと撮れない面もあって、地面スレスレからスマホで撮っている方もいらっしゃいました。ふと立ち寄った人からも「これなんだろう」「写真、きれいだな」といった反応があったので、作品をうまく景観に馴染ませることができたのではないかと思っています。桑ア:SNSで見つけた「新しい展示表現が面白い」というコメントが印象に残っています。これは私たちが狙っていた部分でもあるので、今までにない形の展示にアプローチしたことが来場された方にも伝わって、とてもうれしいです。「いい意味での違和感」みたいなものは、ファンでない方にもしっかり伝わったのではないかと思います。

作品展示について金村美玖さんにも話を聞きました

――ご自身が撮影された作品が、実際に展示されていかがですか?新たな展示方法として多面体を使用したので、見る方向によって違った印象を受けて面白い写真展示になりました。日向坂ファンの皆さんだけでなく、たまたま通りかかった方にも楽しんでいただけるアートになったと思います。――今回展示するにあたって、どのようなテーマやイメージで作品を撮影・セレクトされましたか?『7回目のひな誕祭』とCENTRALさんとのコラボでしたので、7年の道のりを振り返りつつ想像が膨らむような展示にしました。最初にひとつひとつのブロックに仮題を付け、その言葉から派生させてモチーフを撮影・セレクトしました。同じようなトーンでまとまっていると思います。――展示作品の中でお気に入りの1枚と、その理由を教えてください。

2024のブロック足元の写真です。実は最初は使うつもりがなかった1枚なのですが、全体の構成と文章との繋がりをみて追加しました。「立ち止まったら全てが終わってしまう気がした。」というステートメントと相性がいいなと。――αをご愛用いただいていますが、αで撮影されている中で「楽しい」と感じるポイントやお気に入りの点があれば教えてください。長い間αシリーズを使用させていただいていますが、描写力・色再現どこをとってもハイレベルなのでとても信頼しています。クリエイティブルックは編集せずともきれいな写りになるのでいろいろ試せて楽しいポイントです。――今後、どのような作品を撮ってみたいですか?撮っていて一番楽しいのはポートレートなので、メンバーの写真はもっと残していきたいです。展示方法もいろいろと試してみたいですし、写真を使用したグッズも気になります。「この世も捨てたもんじゃない」と思ってもらえる瞬間を見つけていきたいです。

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