
α7R VIがもたらす表現の自由――井上浩輝氏が語る予測不能な自然を確かな作品へ導く力
Rの解像、その先へ vol.6
写真家 井上浩輝 氏
α7R VIを初めて手にした時は、前面からだけでなく上面からも視認できるタリーランプの配置や、いっそう握りやすくなったグリップなど、細やかな工夫に嬉しくなりました。電源を入れてファインダーを覗くと、素晴らしい解像度と明るさのおかげで、かつて近眼で困っていた自分が初めてコンタクトレンズを入れた時のような、クリアな世界が広がっていたのを覚えています。実際のフィールドでも、より小さな被写体を認識する進化したAFと、最高約30コマ/秒(電子シャッター時)の高画素連写の組み合わせは非常に強力で、写真表現の新たな可能性を感じています。
野生動物と同じ目線で、静謐な世界を描く
私が目指しているのは、厳しい自然の中で生きる野生動物たちと同じ目線の高さに立ち、彼らの息遣いが聞こえてくるような静謐な世界観を表現することです。もちろん、彼らの愛らしい顔を画面いっぱいに配置する構図も素敵ですが、北海道の広大な風景の中にぽつんと佇むシブい構図もいっそう素敵なものです。それは、プリントして部屋に飾っておきたい、そばに置いておきたいという気持ちの発露なのかもしれません。そう、記憶に長く残るような、宝物のような偶然の欠片を拾い集めているのかなと思います。
高解像とAF性能が生み出す、表現の余裕
そんな思いで撮影したのが、巣穴からそっと顔をのぞかせた子ぎつねです。春に生まれた子ぎつねが、巣穴から顔の2/3ほどをそっとのぞかせた一瞬を狙いました。生まれたての灰色の毛が少しずつきつね色に変わりつつある頃です。手前にピントを惑わせかねない草葉があって厳しい状況ですが、進化したリアルタイム認識AFが子ぎつねの小さな瞳を的確に捉え続けてくれる信頼感は心強いものです。
さらに、縦幅を4Kディスプレイに合わせて2160pxにトリミングをしても、G Masterのおかげもあり、毛一本一本まで極上のリアリティで描かれています。そのままの画角でも、こうして大胆なトリミングをしても作品として成立する。この「トリミング耐性が生む撮影時の余裕」が、写真表現の幅をいっそう広げてくれるのかなと感じています。
高い解像力が描き出す、北海道の風景
α7R VIの高解像は、風景撮影でも魅力に感じました。ここは長く「白樺ラインダンス」の木立と呼んで、何度も撮影に訪れている場所です。これまでさまざまなαのボディとレンズで向き合ってきましたが、α7R VIで捉えたこの一枚は、過去最高の解像感が得られたと感じています。白樺の樹皮の細かな模様や、奥にひっそりと咲く桜のディテール、そして葉の一枚一枚まで破綻なく写し止める描写力はまさに圧巻です。105mmという焦点距離での撮影ということも相まって、肉眼で見た以上の極上のリアリティが、ここにはあるのかなと思います。
予測不能な自然環境における心強さ
少しひんやりしはじめた夕方、巣穴の「子ぎつね」が夕陽を浴びていました。こうした暖色やアースカラーの多いシーンは、これまでの私の経験上、基準となる白や灰色が画面内にないためオートホワイトバランスが難しい場面でした。しかし、α7R VIの撮って出しデータは違和感のない見事な仕上がりになっています。現像のスタートラインが底上げされることで、本来の大きな目的である表現としての色作りに多くの時間を割くことができるようになることと思います。
また、ファインダー内での没入感を高めるために現場では積極的にAPS-Cクロップ機能を使いますが、子ぎつねの毛並みの立体感や解像感は驚くほど高く保たれています。現場でいっそう自由に画角を操れることは、予測不能な自然環境において心強さを感じています。もっとも、後から構図を微調整したくなることもあるものですから、RX1R IIIのように全画素RAWが残るステップクロップ機能が、今後のアップデートなどでこのシリーズにも用意されると、表現の自由がいっそう広がるのかなと感じています。
高解像と高速連写が変えた、作品づくり
α7R VIを使って最も感じた変化は、高解像と高速連写が当たり前に両立したことです。かつてはトリミングや連写を否定的に捉えるセオリーもあったように思います。その一方で、高画素センサーを搭載したり、Basicモデルであっても最高約30コマ/秒の連写ができるαが登場するなど、αはこれらを当たり前の表現技術としてユーザーに浸透させてきました。一発撮りの美学に憧れる気持ちも理解できますが、最終的にどう見えるかという素敵な結果に強く着目すれば、トリミングも連写も大切な手法なのは言うを待ちません。最高約30コマ/秒の高速連写と進化したAFの組み合わせは、目にも留まらぬ速さで走り回る“きねずみ”ことエゾリスのような、予測のつかない一瞬の動きを的確に捉え、確実に写し止めてくれます。αがもたらしてくれた、撮影時の足枷を外すように表現の自由度を広げてくれるこの変化を、私は大歓迎しています。
エクステンデッドRAW処理でより洗練されたRAW現像を実現
α7R VIはImaging Edge Desktopに新たに搭載された「エクステンデッドRAW処理」機能に対応したのも嬉しいポイントです。こちらの作品では、夕暮れ時にアプローチする大好きなBoeing767を300mmで狙いました。薄暗い空でも被写体認識AFが機体を的確に捉えて追随してくれる安心感は格別です。高感度撮影によるノイズに対しては、Imaging Edge Desktopの「エクステンデッドRAW処理」に含まれる「エクステンデッドNR」を使用しました。物理的なデータレベルで解像感を保ちながらノイズを大幅に低減する手法は、AIによる推論が広がりつつある現在において、貴重なアプローチだと感じています。また、動きのある被写体でも複数枚撮影することなく効果的にRAW現像できるため、表現の土台を支える心強い機能だと感じています。
スチルと動画をシームレスにつなぐ一台
目の前の予測不能な「偶然の欠片」をワンオペで集める私のネイチャー撮影現場では、スチルと動画の撮影を頻繁に行き来します。数年前のモデルから搭載されている「静止画/動画独立設定」は決して目新しいものではありませんが、1/1000秒のスチル設定から1/60秒のなめらかな動画設定へと瞬時に切り替えられるこの機能は、今やなくてはならない便利なものです。今後は、フォーカスエリアなど、独立設定ができる機能のいっそうの拡充を強く期待しています。また、4K 120p撮影時に「APS-C / Super 35mmモード」を組み合わせると、70-200mmレンズがF2.8の明るさを保ったまま換算420mm相当の画角になるという、頼もしい擬似超望遠ズームに化けてくれます。一本のレンズで「引き」と「寄り」をシームレスに行き来できることは、機材を増やせない自然撮影において、表現の自由度をいっそう広げてくれると感じています。
表現の自由を広げてくれる、頼れる一台
α7R VIは、トリミングと連写による表現の自由を現実のものとしてくれたカメラと言えるでしょう。極上の画質はもちろんのこと、予測不能な自然の中で確実な撮れ高をもたらしてくれるのは本当に心強いものです。いっそう素敵なのは、この恩恵が静止画だけでなく動画でも同様に得られるということです。ネイチャー撮影のフィールドへ持ち出すときの安心感はもちろん、現場で目の前に現れた「偶然の欠片」を掴みかけたときの安心感がこれまでとまったく違うというわけです。古いセオリーという足枷を外し、私の視点と表現を広げてくれるのがこの新しいα7R VIです。
記事で紹介された商品はこちら
ワンクリックアンケートにご協力ください
αUniverseの公式Facebookページに「いいね!」をすると最新記事の情報を随時お知らせします。





