α7R VIが描き出す鉄道と自然の調和――山下大祐氏が語る、一瞬の情景を作品へ導く描写力
Rの解像、その先へ vol.9

鉄道写真家 山下大祐 氏

α Universe editorial team

α7R VIを手に取ってみると、すべてのαシリーズでほとんど変わらないサイズ感と軽さ、そして強いポリシーを感じるカメラデザインに、今作も共感と安心感がありました。使ってみたときの驚きは、7Rシリーズとしての詳細描写力の飛躍はもちろんのこと、α1 II同等の最高約30コマ/秒(電子シャッター時)の高速連写を兼ね備えたことにありました。もうこの一台は、鉄道撮影者にとってほぼすべての役割を果たしてくれるという印象です。その一方で、鉄道写真において重要なのは、機材の性能だけではありません。刻々と変化する光や風景の表情を読み取り、その瞬間をどのように切り取るかが作品づくりの鍵になります。

光と風景、その一瞬を見極めて鉄道を描く

私が鉄道や鉄道風景を撮影する際に大切にしているのは、自然光の変化を見極めることです。風景のコントラストや色は常に変化し続けています。その変化を見ながら、列車が現れた瞬間にどう写してやるのが印象的になるのかを判断し、最適なカメラ設定や構図を選択することを意識しています。素直な風景の美しさだけでなく、自然と鉄道の質感の違いや、それらが調和する世界を描きたいと思っています。

有効最大約6680万画素が描く、雄大な鉄道風景

α7R VI,FE 100-400mm F4.5 GM OSS 279mm,F5.6,1/320秒,ISO100

その世界観を表現したのが、深い山間を走る只見線の作品です。深い山間を表現するため、列車はあえて小さく配置しました。しかし、その分、見る人は自然と列車部分を拡大して細部まで鑑賞することになります。α7R VIの有効最大約6680万画素は、そんな鑑賞にも十分応えてくれます。列車に記された細かな表記まで読み取れるほどの高精細さに加え、深緑の谷間へ差し込む繊細な光の強弱や木々の立体感まで丁寧に描き切ってくれました。もちろん、鉄道風景の魅力は、高い解像性能によって細部を描き出すことだけではありません。同じ場所でも、時間や光の変化によって全く異なる表情を見せてくれます。

α7R VI,FE 100-400mm F4.5 GM OSS 265mm,F5.6,1/125秒,ISO100

1枚目の写真では朝の斜光線によって緑が照らされ、立体感と奥行きを感じられる表現になっています。一方、こちらの写真は、まだ日差しの届かない明け方に撮影しました。そのため、深緑を立体的に見せるのではなく、暗がりの中に橋と列車がポツンと浮かび上がるように表現しました。具体的にはアンダー目の露出かつシャドーのトーンを下げています。夏の緑と川面の静寂を目の当たりにしたからこそ閃くことができた表現ですまた、こうした自然豊かな鉄道風景では、光の表情だけでなく、明暗差の大きな場面をどのように残すかも重要になります。

広いダイナミックレンジが支える豊かな階調表現

α7R VI,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 72mm,F5.6,1/200秒,ISO100

列車を小さく見せることで周りの風景の雄大さが見えてくるわけですが、そこに表情ある雲が入れば臨場感が湧いてきます。一方で難しいのは、高輝度の白雲と深緑の露出差を上手にコントロールすることです。最大約16ストップ(メカシャッター時)の広いダイナミックレンジは、この明暗を情報豊かに記録し、意図した明暗に出力させてくれます。暗部に沈みがちな列車色も、やや明るめに見せることができています。そして、風景全体の階調を残すことに加え、鉄道撮影では一瞬のタイミングを確実に捉える性能も重要になります。

一瞬のチャンスを逃さない、高精度AF

α7R VI,FE 100-400mm F4.5 GM OSS + 2X Teleconverter 680mm,F9,1/400秒,ISO800

こちらは、トンネルから抜けた列車が手前のトンネルへ入るまでの、ごく短い一瞬を狙った作品です。このようなシーンで重要になるのは、何よりもピント合わせの確実性です。架線や線路などを目標にした、いわゆる置きピンによるピント合わせは、トンネル間のどこか一点にしか合わせることができません。そこでα7R VIのファストハイブリッドAFと被写体認識(列車)による撮影を選択しました。最大759点の測距点が認識被写体を確実に捉えて、連写撮影の間も離しません。列車の前面・側面のどちらでも認識精度が高く、構図を変えながら撮影する際も安心感がありました。実際には、列車がトンネルを抜けて外光を受けた瞬間にシャッターを切りました。すると、1コマ目からしっかりと列車へAFが追随し、その後も安定して捉え続けてくれました。さらに、トンネル内壁のわずかな輝度までダイナミックレンジの中に収まり、明暗差の大きなシーンでも豊富な情報を残してくれました。

高速連写だからこそ出会えた、一瞬の交錯

α7R VI,FE 100-400mm F4.5 GM OSS 251mm,F5.6,1/8000秒,ISO1600

高速連写がもたらす作品づくりへの変化は、まさにこの写真のようなシーンで見えてきます。鳴動する踏切の警報器の向こうを通過する列車に対し、最高約30コマ/秒(電子シャッター時)で連写を続けました。フレームに飛び込んできたのは直線基調の通学列車です。期待したのは乗客のシルエットです。運にもよりますが、10コマ/秒では逃してしまったかもしれない被写体の交錯が何枚か記録され、そのうちの一枚を選びました。西日が踏切の警戒色を鮮やかに照らし、余計な影もありません。窓越しに見える白いシャツやカーテンのしわが、幾何学的な画面の中で人の気配を感じさせ、作品に温かみを与えてくれました。

流し撮りで描く、鉄道のスピード感

α7R VI,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 121mm,F13,1/8秒,ISO100
α7R VI,FE 24-70mm F2.8 GM II 42mm,F8,1/8秒,ISO100

一瞬を切り取る高速連写とはまた異なり、鉄道のスピード感そのものを表現する方法として、流し撮りがあります。こちらの写真は、2枚とも1/8秒のシャッター速度で撮影した流し撮りです。それほど低速シャッターになると背景が溶けるようにブレて、列車が浮かび上がる描写になるのが特徴です。最初の写真は電子シャッターで、ライブビュー連写となるようドライブモードHiを選択しました。手ブレ補正の効果もあり、連写中も列車を画面上で捉えやすかったため、狙い通りの写真を撮ることができました。またα7R VIの進化点となるオートホワイトバランス精度は、こういった草木の緑色が全面に及ぶ絵に対して、従来よりも高精度にはたらく印象を受けました。次の写真は新幹線を近距離から撮影しています。とんでもないスピードであらわれる列車を撮影するので、最初のひとコマ目が勝負です。メカシャッターを使ってフレーミングと同時にカメラを振ってシャッターを切りました。偶然性による描写を期待する部分もありますが、新幹線であることが伝わる描写を得ることが求められます。こうした流し撮り撮影で大切なのは、ファインダーの見やすさと手ブレ補正の制御です。新開発の電子ビューファインダーは高精細な約944万ドットを誇り、被写体の動きを視覚に感じることができます。手ブレ補正では機構内蔵レンズとも協調して動作し、流し撮り時も的確な制御で撮影を助けてくれました。

コンポジットRAW撮影が広げる夜の鉄道表現

α7R VI,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 122mm,F4,1/30秒,ISO12800

日中の動きのある鉄道だけでなく、夜の静かな時間帯に見せる鉄道風景も、魅力的なシーンです。この撮影日では、おぼろげな三日月を見つけ、ちょうどその方角に向いた駅へと急ぎました。列車が画面奥からやってきて乗客が乗り降りするまで、ズームで寄ったり引いたり、思いつくままに撮影したうちの1カットです。高感度となるため撮影前に少し考え、様々な合成処理が可能なコンポジットRAW撮影のノイズ低減用撮影をしました。三脚が使えない場所のため手持ちでのチャレンジです。ワンショットで複数枚のRAWが撮影され、撮影後、Imaging Edge Desktopで合成処理を施しました。これによって通常撮影よりも低ノイズで美しい作品に仕上がったと思います。この機能の特徴は、コマ間で動く被写体があっても上手に処理されることです。列車停車時だけに限らず動いている段階から撮ることができるため、鉄道風景撮影でもさまざまな場面で活用できる機能でしょう。

鉄道撮影をさらに支える進化

積層型CMOSイメージセンサーExmor RSの搭載により、高画素機でありながら高速性能もますますアップしたα7R VI。プリ撮影機能も使えるようになったことは、これまで不可能と思われたシーンが、誰でも簡単に撮影できるようになった大きな進化です。さらに背面操作ボタンにイルミネーションが追加されたのが素晴らしいと思います。こういうユーザーサポートの観点は嬉しいものです。

アップもロングも、一台で応える鉄道カメラ

α7R VIは、アップよし、ロングよし。私にとって、まさにどんな鉄道シーンでも最大級の活躍ができるカメラだと思います。高速性能が問われるシーンを、α最高画素数(2026年5月広報発表時点)で記録できる喜びを味わいながら撮影したいと思います。それにはやはり新幹線をはじめとする高速鉄道の沿線に繰り出したいです。内包された撮像性能だけでなく、超音波アクチェーター式のアンチダスト機能やボタンのイルミネーションのような機能は、今後ともαシリーズに広がっていくことを期待しています。

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