
「α1 II」の絶対的信頼と「RX1R III」の撮るよろこび
―北国の野生動物と雄大な自然風景、そして手のひらの「小さな巨人」が描く日常
写真家 井上浩輝 氏
「CP+2026」で写真家の井上浩輝氏にお話しいただいた内容や発表作品を、α Universeでも特別にご紹介。今回は、「α1 II」をはじめ、レンズ一体型フルサイズコンパクトカメラ「RX1R III」で撮影した作品も多数披露。季節ごとに変わりゆく北国の自然風景と野生動物の作品を見ながら、撮影時の状況や思いなどを語ります。
井上浩輝 / 写真家 1979年、北海道札幌市生まれ。風景写真の撮影を続ける中、キタキツネを主軸に捉えながら野生動物が織りなす風景を追い求めるようになり、米誌「National Geographic」の『TRAVEL PHOTOGRAPHER OF THE YEAR 2016』ネイチャー部門で日本人初の1位を獲得。自然写真のみならず航空写真など、多岐にわたるジャンルを撮影し、国内外の広告にも作品が使用されている。最近は映像の撮影にも注力。その活動はドキュメンタリー番組などでも紹介されている。2014年には東京カメラ部10選に選出され、2022年より早稲田大学基幹理工学部非常勤講師として「写真表現」の講義を担当している。公式サイト:https://hirokiinoue.com/
お気に入りのカメラとレンズを使って、北海道の野生動物と風景を撮影
みなさんこんにちは。写真家の井上です。どうぞよろしくお願いします。私がこの1年、気に入って使っていたカメラとレンズのお話から始めたいと思います。
よく使っていたのが、「α1 II」というカメラでした。そして、α6000シリーズの最新版「α6700」ですね。センサーサイズがAPS-Cの小さなカメラですが価格も手頃で、なんといっても写りがとてもいい。そのため、こちらもよく使っていました。そして、後ほどご紹介しますが、「RX1R III」もよく使っていたものであります。
レンズについては、基本的に「FE 300mm F2.8 GM OSS」の単焦点レンズを動物の撮影で使っていました。時々、1.4倍のテレコンバーターをつけています。僕は2倍より1.4倍の方が好きです。そして、動物と風景、両方の撮影によく使っていたのが、「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」。安定感抜群で、AFがとても速い。そして、「FE 24-70mm F2.8 GM II」は風景撮影によく使っていました。
さて、「CP+」が終わり、地元に戻って少し経つと、北海道にも遅い春がやってきます。
この場所は、私が最初に撮影に出かけるところです。自宅から車で20分ほどのところで、キツネを探したり、さまざまな風景を撮る場所の全体像がつかめたりできるので、ここに行きます。まだ小麦が少し緑のじゅうたんに見えていますが、木々が芽吹き始めたばかりなのがわかると思います。
このあたりでよく見かけるのが、エゾユキウサギです。雪ウサギですが、春になるとだいぶ毛の色が見えてきます。耳が透けていて素敵ですよね。
近所にある小さな紫色のエゾエンゴサクが咲いている場所に行きまして、エゾリス、僕はいつもきねずみと呼んでいますが、このきねずみが通りかかるのを待っていました。もちろん餌付けされているきねずみであれば簡単に撮れますが、野生はそうはいきません。この時もなかなかうまくいかなくて、何日も空振りしました。たまたま通るのを待つのは、本当に効率の悪い撮影だなぁと思いつつ、通るのを待って撮った1枚です。
今年は隣町の森の中でフクロウがすくすくと育ち、この後は子育てまでしていました。素敵なところにいてくれました。
春から初夏、印象的だったのは珍しい子ぎつねたちとの出会い
そして、一気に緑が増えてくる5月。ゴールデンウィークが終わる頃には毎日のように緑が増えていくのを感じます。
今年、僕が一番うれしかったことの1つが、この子ぎつねとの出会いでした。毛の様子がいつもと少し違いますよね。これは十字狐(じゅうじぎつね)と呼ばれている、珍しいキツネの毛色です。
私はいつも、「キツネの顔が2つ出てきたら、絞ればいいんだよ」と言っています。でも、絞ると背景がよく写ってしまって雑然と見えてしまうので、この時はF2.8のままで彼らがそろうのを待ちました。
走り回ったり、初めてのエサに戸惑ったり。成長した子ぎつねたちを追いかけて
上の写真は太平洋です。私は釧路から根室のあたりをふらふらするのが好きになりました。2017年から18年にかけて、花咲線という釧路から根室にかけてのローカル線で素敵な風景や動物たちを撮る仕事をして以来、ずっとこの地域に関わっていて頻繁に通うようにしています。
そして、根室・釧路近辺で今年出会えたのが、またもや十字ギツネでした。このお母さんはツンデレ系でしたが子どもは非常に甘えん坊でしたね。
しばらくすると、北海道の山々の雪が消えていき、あっという間に初夏の雰囲気に包まれます。
この頃には、子ぎつねたちもだいぶ大きくなっています。走り始めたら、「お前にそんな筋肉がついていたのか」というぐらい、しっかりとした足取りで走るようになります。
これも、かわいいですよね。私が初めて一眼カメラを使い始めたのは2010年でした。当時はαの前身「NEX」という名前で販売されていましたが、AFが非常に辛くてなかなか合わない。そして、2012年に「写真家になろう」と思って北海道に戻った時も、AF性能は変わりませんでした。その後、「α6000」が出てきた頃、私はキツネを撮りたくなって、いろいろなキツネを撮り始めるのですが、こうやって走ってこちらに向かってくるキツネにピントを合わせるのはとても大変でした。でも、今はどうでしょう。走ってくるキツネの目にぴったりとピントを合わせてくれます。
親元を離れていく直前は小さな体にたくましさを感じる
さあ、もう雰囲気は初夏です。この頃になると、1人で過ごしている子も見かけるようになります。
このまま遠くに行ってしまって見当たらなくなる子もいますが、孤高のキツネですから、こうやって1人で過ごしていく時間も大切なのかもしれない、と思って見ています。
どんどん季節が進み、麦秋が近くなっているのか、麦もだいぶ色づいてきています。これは「α6700」で撮影していますが、悪くないと思いませんか? もちろん、レンズのおかげもありますが、きれいな風景写真を撮れることがこの1枚でもわかると思います。
これを見ると、写真は光が大事だと実感しますよね。光があるところに、彼らがスッと入ってきてくれました。こんな時は、ハイライト重点測光という測光方式を使ってみてください。ハイライト重点測光とは、画面の中の一番明るいところを白飛びしないギリギリの明るさで、プラスマイナスゼロの露出として撮ってくれる機能です。上の写真で使うと、キツネの目の下の白い毛のところが飛ばないくらいを適正露出として撮ってくれるので、とても楽に撮影ができます。
常に持ち歩いている「RX1R III」はステップアップクロップが便利
そして、2025年夏に、私にとって待望の新しいカメラが発売されました。ソニーの「RX1R III」というカメラです。
こちらのカメラ、500gを切る軽さなのに、「α7R V」と同じ有効約6100万画素という超高画素のフルサイズセンサーを搭載しています。レンズは35mm F2.0の固定式ですが被写体認識AFもついているので、私は勝手に「コンパクトに最高画質を」といったカメラなんだろうなと思っています。
とてもコンパクトなので、僕はいつも持ち歩いています。価格は張りますが、これを持って歩くのがとても楽しいんです。
釧路から根室にかけての撮影にも持っていきました。今まで僕は35mmあたりで撮影することは、めったになかったんです。スマートフォンのカメラくらいでしか使ってこなかったと思うのですが、この35mmが気持ちよくなってきました。
そして、普段ならタンチョウがいたら、「望遠で大きく撮るぞ」と思っていたのですが、35mmも悪くないと思うようになったんです。この時はチョウチョが一緒に写って、いい瞬間を撮ることができました。
機窓からの撮影にも最適でF2.0の明るいレンズが大活躍
このカメラ、ありとあらゆるところに持って出かけています。
この時は画角の中に窓を入れず、画面いっぱいに東京の夜景が見えるような画角で撮っています。やはりF2.0ですから、上の写真のように明るく撮ることができます。
そして、こんなこともありました。秋田の上空で稲妻が光って地上が見えたんです。「こんなシーン、よく撮れたな」と思うかもしれませんが、そんなに難しくありません。ひたすら連写すればいつかは写ります。
こちらは根室でよく見かけるアッケシソウやサンゴソウと言われる塩生植物で、これが咲くと「秋だなぁ」と思うわけですが、これも「RX1R III」で撮りました。
紅葉の晩秋から雪に覆われる冬へ。様々なカメラで季節の移ろいを撮る
さあ、季節が進むと秋蒔き小麦のじゅうたんが、あちこちに見えてきます。向こう側には、カラマツの紅葉が見えています。カラマツの森の中はとても明るくなっているんですね。
ここまで明るくなると素敵ですよね。カラマツのにおいを楽しみながら森の中を歩きました。こんなことをしていると、ある日、霜が降りてきて、さらに季節が進んでいることを実感します。
上の写真は「FE 12-24mm F2.8 GM」をつけて12mmで撮っています。僕は秋にこうやってカラマツを見上げる時と、ボーイング737の操縦席を撮る仕事をする時くらいしか、12mmは使いませんが、本当に素晴らしいレンズです。こんな写真を撮っているうちに、雪が降り始めます。
こちらは「RX1R III」で撮っていますが、縦位置で写真を何枚も撮ってから合成をしています。ちょっとかっこいいですよね。
そして、こんなジュエリーアイスを撮りに行ってみたり、僕の大好きなコミミズクを撮りに行ったりしました。
そして、キツネの正面。
やはりいいですね、キツネの目にきちんとピントが合うというのは。写真集の表紙にもなったキツネを撮った時はピントが鼻に来ていましたが、今はきちんと目にピントが来るようになりました。
そして、冬の寒い中でも、きねずみたちはあちこちで餌を探して元気に走り回っています。
下の写真を見てもわかる通り、もう目へのピントとの合いかたが全然違いますよね。
あっという間に1年が過ぎ去ってしまいました。「α1 II」の絶対的信頼と「RX1R III」の撮るよろこび、私の北海道での1年の撮影をご紹介してきました。また来年、ここで皆さまとお会いできることを楽しみにしています。本日はご清聴ありがとうございました。
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