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進化したα1 IIの星空特性

天体写真家・イラストレーター 沼澤茂美 氏

α Universe editorial team

「CP+2025」で天体写真家の沼澤茂美氏にお話しいただいた内容や発表作品を、α Universeでも特別にご紹介。星空撮影での「α1 II」の優位性を、作例を上げながらわかりやすく説明し、自身が活用する撮影テクニックやカスタムキーまでを惜しみなくお話いただきました。

沼澤 茂美 / 天体写真家・イラストレーター 天文宇宙関係のイラスト、天体写真の仕事を中心に、長年にわたり内外の天文及び写真雑誌や書籍の執筆、NHK天文宇宙関連番組の制作や海外取材などを行ってきた。パラマウント映画社「スタートレックDeep Space9」のポスター制作などを担当。また、世界最大規模の星の祭典「胎内星まつり」の企画運営を41年間継続、コロナ禍では3年間の生中継開催を成功させる。村上市天体観測施設「ポーラースター神林」、胎内市立「胎内自然天文館」の建設監修を行っている。同施設顧問。ライフワークとして赤外写真、モノクロファインプリントの表現を追求している。2004年環境大臣賞受賞。著書多数。

星空撮影で役に立つ機能が充実。ノイズ特性も改善され星空を忠実に写し撮る

2024年の暮れに発売された「α1 II」は「α1」と同じセンサーを使っていますが、中身は驚くほど進化しています。私のセミナーでは、特に星空の撮影で優れている点をピックアップしてご紹介し、最後には今年2月に発表になった「FE 16mm F1.8 G」の作例を上げながら、レンズの特徴についても簡単に説明したいと思います。まずは改善されたノイズ特性についてです。

α1 II,FE 14mm F1.8 GM 14mm,F1.8,20秒,ISO1250

「α1」では、露出を長くすると多く写るはずの小さい星がなぜか消えてしまう「スターイーター現象」という困った現象が起こっていましたが、「α1 II」では改善されています。上の写真は「FE 14mm F1.8 GM」で1月に撮影した星空です。真ん中の四角い枠で囲んだ部分を拡大して比較したものが下の画像になります。

一番上の段が「ノイズ軽減」というメニューをオフに、真ん中は弱に、一番下は標準に設定して撮影したもので、非圧縮のRAWデータから現像しています。ノイズ軽減をアクティブにした状態で5秒以上露出した赤い枠の画像を見るとよくわかると思いますが、なんだかモヤッとして小さい星が消えているように見えますよね。これがスターイーター現象です。さらに、星が緑色やマゼンタなど、本来はあり得ない色になってしまうことを「偽色」といいますが、この偽色も増えている。上の画像は300%ぐらいに拡大したものですが、このくらい拡大しなければわからない、というのが正直なところで、僕は気にしていませんでしたが、天文ファンは気になるものです。「α1 II」ではこの現象が起こらなくなり、星も鮮明に写すことができるようになりました。

天体写真家が設定したカスタムキーを公開ドライブのダイヤルに追加された「*」が秀逸

ここで私が「α1 II」を使っているときのカスタムキーの設定を紹介したいと思います。下の画像をご覧ください。

このようにカスタムして、設定の変更を素早くできるようにしています。特に紹介したいのは右下にあるブライトモニタリングです。ブライトモニタリングはソニーが誇る星空撮影に欠かせない機能ですが、カスタムボタンに設定しないと使えない、メニューからは出すことができない機能です。それからピクセルシフトマルチという機能もボタンに割り当てています。上面のダイヤルには撮影設定を記録できるところが3つありますが、私は1番に一般撮影、2番に長時間露出の星空撮影と手ブレ補正オフ、3番に2秒くらいまでは手持ちで撮れるので、手持ち撮影の設定を入れています。それからもう一つ、「α1 II」になって追加されたものがあります。

上面左のダイヤルにある*(アスタリスク)です。ドライブモードなどを設定するダイヤルになりますが、これは左手を使わないと動かすことができません。冬の寒い時期は手を出したくないので右手1本ですべてを操作したいのに、それができない。さらにダイヤルなのでこの設定はメモリーしておくことができず、物理的にまわさなければなりません。しかし、今回追加された「*」の位置に設定しておくと、内部メニューでドライブモードを変えることができるようなります。つまり、片手ですべての操作ができて、その設定を全部メモリーしておける、という非常に便利な機能です。

ピント合わせで拡大しても使うことができる進化したブライトモニタリング機能

次はブライトモニタリング機能についてご説明します。ブライトモニタリングはボタンを押すとライブビューモードが明るくなり、明るいレンズを使った場合は天の川もよく見えてフレーミングしやすくなる機能です。

強化されたのは、拡大しても明るい状態を保てるようになったところです。以前はピント拡大をするとブライトモニタリングが切れてしまっていたのですが、ピント拡大の状態でもホールドされ、アクティブの状態でピント合わせができるようになりました。

ただブライトモニタリングをオンにすると、シャッタースピードを遅くして光を蓄積するので若干のタイムラグがあります。明るさが瞬時に反映されないので、ブライトモニタリング機能をオンにした状態でピントを合わせるのは多少ストレスがあるかもしれません。ただ拡大しても暗い星がよくわかるので、ピントが合っているかどうかの確認には有効です。使いにくければオフにすればいいだけなので、ぜひ活用してみてください。

α1 II,FE 20mm F1.8 G 20mm,F1.8,20秒,ISO1250

上のような星景写真もブライトモニタリングを使うと便利です。夜は地上の景色が暗くてよく見えませんが、この機能を使えばディテールまでわかるのでかなり正確なフレーミングができます。以前は撮ってみたら余計なものが写り込んでいた、というミスも多く、少しずつずらして撮り直しを繰り返していましたが、これなら一発で思い通りの作品を撮ることができます。

星空撮影をより気軽に楽しめる手持ち撮影も可能な強力な手ブレ補正

次は強力なボディ内手ブレ補正についてお話しします。「α1 II」のボディ内手ブレ補正は中心部が8.5段と「α7R V」よりも少し進化しました。下の写真は私の地元である新潟県で撮影したものです。

α1 II,FE 20mm F1.8 G 20mm,F1.8,1.6秒,ISO6400

新潟の冬はほとんど星空を見ることができませんが、たまに晴れるんです。朝方、家に帰ったら雲の切れ間が出てきたので、すぐカメラを取り出して撮影しました。手持ちですがシャッター速度は1.6秒。2秒ぐらいまでは成功率が高いです。拡大して見てみましょう。

周辺部も中央部も、星はかなりきれいな点状になっていますので手ブレ補正は十分に使えると思います。感度はかなり高く設定する必要があるためノイズが多くなりますが、最近はAIでノイズを取るソフトがかなり進化していますから、高感度で撮影してもきれいな画像に仕上げることができます。

α1 II,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F1.4,2秒,ISO6400

上の写真はシャッタースピード2秒で、手持ちで撮影したものです。河川敷にかかっている霧の変化が激しかったのですが、スナップしてみました。右の一番明るい星は木星です。

α1 II,FE 35mm F1.4 GM 35mm,F1.4,1.6秒,ISO6400

上は35mmのF1.4で、1.6秒で撮影したものです。35mmになると星の主張が強く、目立つようになってきます。

α1 II,FE 50mm F1.2 GM 50mm,F1.2,1秒,ISO6400

次は50mmのF1.2で、1秒ですね。下に白鳥が写っていますが、1.2秒ぐらいだと白鳥はほとんど動かずに映るので、もう少し近景に白鳥がいると面白い写真になりそうです。

α1 II,FE 14mm F1.8 GM 14mm,F1.8,2秒,ISO8000

最後は14mmで2秒。14mmは星景写真でよく使われる焦点距離ですが、ダイナミックな冬の星空と淡い天の川を一緒に写すこともできます。これを手持ちで撮れるのはとてもうれしいですし、楽しくなると思います。

4枚ピクセルシフトマルチ撮影でカラーノイズや偽色の発生を防ぐ

続いてはピクセルシフトマルチについてです。「α1 II」に限らずピクセルシフトマルチ機能を搭載しているカメラはたくさんあります。この機能は、少しずつ画素をずらして撮影することで、トータルで1億画素ぐらいの高解像度の画像ができます、ということで知られている手法です。「α1 II」には、素数は増えないけれど非常に高画質な画像ができる4枚ピクセルシフトマルチというモードがあります。

上の画像の左の図は一般的なデジタルカメラで撮った場合になります。各画素の上にGが2倍になったRGGBのパターンのRGBのフィルターがついているので、1画素が得られる信号の色は1つだけ。つまり、赤の下の画素は赤の信号しか乗らないので、RGBの信号を得るためにまわりの画素から信号をもらって、補完してカラーを生成しているわけです。そのため偽色などの現象が出やすい。ところが4枚ピクセルシフトマルチは同じ1つの画素でも4枚連続で撮るので、最初はRのフィルターの信号を、次は1つずらしてG、次はB、Gというふうに一つの画素で3色全部の信号を得られる。そのため原理的に偽色が出ないのです。

上は拡大像を比較したもので、左はISO5000、5秒の露出で1枚だけの画像になります。これを4枚連続で撮ってピクセルシフトマルチ合成したものが真ん中です。比較すると背景のランダムカラーノイズも、偽色もほとんど出ていないのがわかると思います。そして、右はより長い15秒で撮影した1枚だけの画像です。星はたくさん写っていますが、偽色もあるし、カラーノイズもかなり乗っている。このように比較すると4枚ピクセルシフトマルチを使うととてもきれいに仕上がるのがわかりますよね。さらに、この方法で撮った画像は強引に画像処理をしても画像の破綻がないという利点もあります。

α1 II,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F1.4,10秒,ISO5000

上の作品は昨年話題になった紫金山・アトラス彗星が遠ざかっていくときに撮ったものです。真ん中に写っている彗星を強調するように画像処理をしていますが、ピクセルシフトマルチで撮っているので意外と画像が荒れず、ランダムカラーノイズも少ない作品に仕上げることができました。話を聞いていると面倒くさい設定がありそうに聞こえるかもしれませんが、このモードに設定するだけで簡単に撮ることができますし、ソニーの専用ソフトでの現像も簡単なので、αを持っている方はぜひ挑戦してみてください。

RAWデータの連写で高階調な映像を作成。この手法なら静止画にも動画にも仕上げられる

「α1 II」のように最高約30コマ/秒の高速連写ができれば静止画を繋いで動画をつくることもできます。連写したRAWデータから高階調映像をつくる、ということですね。S-Log3という高階調表現ができる動画モードもありますが、画像を主に扱っている我々にとっては慣れている画像処理ソフトを使える静止画の方がいいのです。皆既日食のコロナの動画などもつくりましたが、やはりS-logよりもRAWデータも使える静止画のほうが階調表現や画質がいいように思います。画像処理ソフトを使って自動処理もできるので、作業自体もさほど難しくありません。ちなみに「α1 II」でテストした結果は非圧縮RAWでは秒間3.7コマ、圧縮RAWでは秒間5コマ、カード容量が許す限りずっと撮り続けることができます。バッファは11分くらいでいっぱいになりますが、その後も撮影可能です。2026年はアイスランドとスペインあたりで皆既日食があり、長さは大体2分です。2分なら楽勝です。2027年にエジプトなどで見られる最大級に長い皆既日食は6分以上ありますが、こちらも問題ありません。とにかく静止画RAWで連写しておけば静止画はもちろん動画にもできるので、かなり便利だと思いますよ。

最新の超広角レンズ「FE 16mm F1.8 G」は軽量コンパクトで星空撮影にも最適

最後は今年2月に発表された「FE 16mm F1.8 G」についてお話しします。超広角の大口径レンズですが、圧倒的に小さくコンパクト。周辺部まで画質はかなり良好なので、星空撮影には最適です。星空撮影の定番として多くの人が使っているのは「FE 14mm F1.8 GM」、さらに「FE 20mm F1.8 G」も非常にコンパクトで人気のレンズです。焦点距離は少し長くなりますが、非常にバランスのとれたレンズとしてよく使われています。

その間の焦点距離として登場したのがこの16mmです。上の画像は3本を並べていますが、16mmは一番コンパクトで、重さも304gと軽いのが特徴。下の画像は焦点距離別に写る範囲を記したものですが、比べてみると16mmは14mmとあまり変わらないように見えますよね。ですから常に装着しておくレンズとしては、より軽い16mmが最適かな、という気がします。

そして作例です。実はこのレンズを受け取ったのは13日前でした。私の地元の新潟は寒波で1週間ほど大雪が続いていて、やっと晴れたのが3日前。晴れ間を探して走りまわり、やっと撮った最初の1枚がこちらです。

α1 II,FE 16mm F1.8G 16mm,F1.8,10秒,ISO1000

だいぶ雲がありますが、画質、星像は非常にいいですね。スバルが写っている中心部はもちろん、周辺部も十分にきれいだな、という印象を受けました。でも、ISO1000でたったの10秒だったので暗い星まで写すことができなかった。レンズ性能がもう少しわかる暗い星を撮るために山奥まで行って撮影したのが下の写真です。

α1 II,FE 16mm F1.8G 16mm,F1.8,15秒,ISO1250

ISO1250、15秒で撮ったものです。それでもシャッタースピードは短いですが、拡大してみるとかなりいいと思います。ちなみに周辺部の拡大写真に写っている明るい星はぎょしゃ座のカペラという星ですが、星が放射状に伸びていますよね。これはレンズのせいではなく薄雲の影響です。薄雲がかかっているとレンズの前面にソフトフィルターをかけた時と同じ効果が出て伸びてしまうんです。私はこの時は、レンズの後にソフトフィルターを貼り付けて使っていました。広角レンズの場合、前面につけるとどうしても星が伸びてしまうので、我々が広角レンズを使うとき必ずレンズの後につけます。ですから、もし薄雲がなければ伸びる現象は起きずに中心部と同じような対照な星になりますので、その点はご安心ください。作例を見て、このレンズはかなり良いことがおわかりいただけたと思います。発売前からネットではMTFなどのデータを見て「周辺部の画質はあまりよくない」など、いろいろなことを書かれていますがまったくそんなことはありません。非常にコンパクトで実用的ですし、画質も非常に良いと思います。Gレンズなので「G Master」レンズと比べるとだいぶ価格が抑えられているのもうれしいところです。そして次が最後の画像です。雪の中、ハンノキ林から真上を見上げて撮ったものです。

α1 II,FE 16mm F1.8G 16mm,F1.8,6秒,ISO1250

三脚を使っていますが、このレンズは「α1 II」や「α7R V」であれば手持ちで撮れますので、フットワーク良く撮影ができるのではないかと思います。今回はなかなか晴れず、スカッとした写真は撮れませんでしたが、「FE16mm F1.8G」と「α1 II」の組み合わせの面白さを体験できました。手持ちで撮れることで星空撮影がより身近になるのではないかと期待していますので、ぜひ皆さんも使ってみてください。

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