
鉄道絶景+α 第7回常磐線(東京〜宮城県)
鉄道写真家 中井精也 氏
撮影日:3月16日 18時05分常磐線(赤塚〜水戸)
ライトアップに照らされた梅で彩られた舞台。列車が青く浮かぶ瞬間は、この時間帯の1回のみ。梅が際立つ列車の位置を意識しながら、梅の存在感が失われ過ぎないシャッター速度を選び、ISO 12800で流し撮りをした
設定と機材を変えてバリエーションを作る

今回の絶景路線は、総延長343.7kmを誇る長大路線の常磐線。この路線には多くの絶景スポットがあるが、今回は梅の名所として知られ、「日本三名園」の1つに挙げられる「偕楽園」沿いの200mの区間のみに狙いを絞って撮影を行った。偕楽園の梅は2月〜3月に見頃を迎え、梅まつりが行われる。この期間中は偕楽園臨時駅も設けられるほどのにぎわいだ。撮影日は線路脇に咲き誇る梅が、まさに満開を迎えていた。絶景スポットには定番の写真が存在し、多くの人がその写真を撮るために訪れる。定番を撮って満足して帰ってしまう人が多いが、これはもったいない。せっかく来たのならいろいろなバリエーション写真を撮ってみよう。バリエーションを生み出すには、構図やレンズの選択、被写体までの距離、シャッター速度や絞りの設定、撮影位置の高さ、時間帯など、撮影条件を可能な限り試す必要がある。その際、ただやみくもに動くのではなく、各条件で撮影できるであろう作品を事前に想像する「写真想像力」が重要になる。スポーツと同じで、写真にもイメージトレーニングが必要なのだ。梅の中を走る列車を目立たせるためには望遠にして梅をぼかしたり、流し撮りで梅を流すなどの工夫がいる。経験が豊富であればあるほど、結果写真を想像しやすい。思いついたアイデアを試し、その結果から学んでいくことが大切だ。そして何より、そのイメージに応えてくれる機材選びも重要だ。機材の制約によって撮影できないのはもったいない。高感度でも理想的な画作りをするα1 IIと、ローリングシャッターによるゆがみが少なく正確に被写体を捉えるα9 IIIは、今回も僕の厳しい要求を軽々とクリアしてくれた。僕とαが共に作り上げた渾身の組写真をとくとご覧あれ。
撮影日:3月17日 11時51分常磐線(赤塚〜水戸)
梅の美しさをFE 300mm F2.8 GM OSSで捉えた。ローリングシャッターによるゆがみのないα9 IIIは高速で横切る列車も端正に描き出す。最高の機材だから実現できる写真だ
撮影日:3月17日 8時52分常磐線(赤塚〜水戸)
偕楽園内から、色とりどりの梅を手前に入れて、1/15秒で流し撮り。シャッター速度を変えてテスト撮影し、キレイな流れを生むシャッター速度を見出した
撮影日:3月16日 19時29分常磐線(赤塚〜水戸)
定番の撮影位置でも、時間を変えれば幻想的なイメージカットに。ここでは列車を撮るというより、輝く線路をメインにした構図に仕上げた。ISO 8000だが高感度とは思えないほどノイズが少なく、梅を細部まで描写している
撮影日:3月17日 9時34分常磐線(赤塚〜水戸)
FE 14mm F1.8 GMで大きく手を上に伸ばし、ハイポジションで花にぐっと寄って撮影した。開放F値だと背景がぼけ過ぎて列車の存在感が薄れたので、列車の形が分かるF7.1まで絞っている
<Pickup LENS>FE 14mm F1.8 GM

僕のメインレンズは16-35mm、24-70mm、70-200mmのズーム3本だが、「とっておきの+αの1本」として、このレンズをバッグに入れている。16-35mmと広角端は2mmしか違わないが、感覚的には数字以上のワイド感が得られる。開放F値が明るいのも魅力的で夜の撮影でも大いに活躍してくれる。
<Photo Technique>シャッター速度で伝え方をコントロールする1/6,400秒で撮影。列車も風景も見せた
上の流し撮りと同じ場所で、列車を写し止めたのがこちら。どちらが良いというわけではないが、速いシャッター速度は梅に目が行き、低速シャッターでの流し撮りは列車が目立つようになる。同じ場所、同じ構図でもシャッター速度を変えることで、写真の伝え方をコントロールできることを知っておこう。
<絶景EPISODE>紅白の梅を添えて特急ひたちが行く
今年は梅の開花が遅れ、満開が3月中旬までずれ込んだ偕楽園。跨線橋から梅と列車を見下ろすこの風景が、昔から有名な定番のカットだ。絢爛に咲き乱れる紅白の梅と、常磐線を代表する特急ひたち号が織りなすこの風景は、まさに日本の鉄道の名シーンの1つと言っても過言ではないだろう。
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