
αと風のなか。奄美大島「青と透明」
写真家 山本まりこ 氏
「CP+2025」で写真家の山本まりこ氏にお話しいただいた内容や発表作品を、α Universeでも特別にご紹介。奄美大島への旅で撮影したたくさんの写真を見ながら、「α7C II」と「α7 IV」、そして個性豊かな5本のレンズの特性を説明。素敵な景色や人との出会いなど、奄美大島の魅力も存分に語ります。

山本 まりこ / 写真家 写真家。スパイスフーズ作家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つairy(エアリー)をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。撮影、執筆、講演、講師など活動は多岐。写真集「ARIY COLORS」「熊野古道を歩いています。」、著書「エアリーフォトの撮り方レシピ」など11冊出版。写真とスパイス料理の教室Room5656主宰、写真とスパイスカレーの空間PEANUTSuu(ピーナッツぅ)をOPEN。好きな食べ物は、カレーとイカ。HP:MARIKO YAMAMOTO OFFICIAL WEBSITEInstagram:https://www.instagram.com/yamamarimo/
豊かな大自然や独特な食文化など奄美大島の魅力を「α」で表現
みなさま、こんにちは。私のセミナーでお伝えするのは奄美大島のお話です。もうだいぶ前になりますが、奄美大島には3回ほど訪れたことがあります。そして昨年、奄美大島で暮らしていた画家・田中一村さんの展覧会に足を運び、その中のいくつかの絵を見た時、あまりの美しさに私は涙が出て足が動かなくなってしまったんです。お花、鳥、蝶など奄美の大自然が描かれていて「こんなきれいなところにまた行きたい」と思い立ち、奄美大島に飛びました。もちろんαと一緒に。では、さっそく奄美大島を見ていきましょう。下の作品の左下に写っているのは亜熱帯植物のヒカゲヘゴです。
鹿児島県にある奄美大島は、鹿児島市と沖縄本島の真ん中くらいにある、とてもきれいな島です。1月に訪れましたがハイビスカスをはじめ、たくさんの花が咲いていました。
そしてご飯がおいしい。下の写真は奄美の郷土料理「鶏飯」です。鶏の出汁を注いでお茶漬けのようにしていただくのですが、これがまたおいしいんですよ。
奄美大島のご飯は、出汁文化を色濃く感じます。お出汁とおいしいお塩で肉や野菜を煮るなど、醤油味ではなく塩とお出汁が旨味を感じるようなお料理が多い。そして、何を食べてもおいしかった。鶏飯は「α7C II」と「FE 28-70mm F2 GM」の組み合わせで撮っています。
長距離を移動する渡り蝶「アサギマダラ」の集団越冬を撮影するために島を北上
奄美の北の方には私が撮りたいものがあります。アサギマダラという青い羽を持つチョウチョです。私が訪れた時、「アサギマダラの集団越冬が見られるかも」と聞いていたので、情報を元に北の海岸近くにある森に向かいました。明け方の真っ暗なうちに到着したので、強力なライトを使って探しましたがアサギマダラはまったく見つからず、日が出てきてしまいました。
太陽が昇れば森の木々にも光が当たり、キラキラと輝き出します。下の写真は「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」で撮っていますが、レンズについては後ほどお話しますね。
この日は残念ながら集団越冬を見ることができませんでしたが、下の写真のような、きれいな満潮を見られたのでよかったです。

そして次の日の朝、雨風が強い中、もっと真っ暗な時間帯からアサギマダラを撮りに出かけました。「私ならこの辺りに止まるかな」と蝶の気持ちになりながら探しましたが、探しても探しても見つからない。「ちょっと点が見えるな、でも違うかな」と思いながらシャッターを切って拡大してみると、なんとアサギマダラが写っていたんです。
上の写真のような状態ではアサギマダラが写っているかどうかわかりませんよね。大きな森の中に点のような状態で枝葉に止まっているので、光を当ててもわからない。一緒に出かけたカメラマンの夫に「あそこにアサギマダラが!」と私が光を当てても、「どこ?」と言われてしまうほどわからないのです。そして確認するために寄ってみると……。
こんな風に葉につかまって越冬をしていました。みんなで集まっていてかわいいですよね。発見できたことが本当にうれしくて「撮らせてくれてありがとう!」と思いながらシャッターを切りました。次は昼間、羽が透けて見えるようなシーンを見てみたいので、滞在中に挑戦できたらいいな、と思いながら次の目的地に向かいました。
ガイドと共に訪れたヒカゲヘゴの群生地でしっとりと雨を湛えた植物を捉える
奄美大島では撮りたいところがたくさんあったので、いろいろな場所に行きました。まず訪れたのは、ヒカゲヘゴの群落が広がっている金作原というところです。
ガイドが同行しないと行けないような場所なので、私もガイドさんと一緒に行きましたが、本当にいろいろなことを教えてくださいました。私は世界が輝いて見える雨の日を狙って出かけたのですが、上の写真も輝いていますよね。「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」で撮っていますが、このレンズは本当に撮りやすいので旅にはおすすめの1本です。
葉からこぼれ落ちる滴がとてもきれいですよね。このレンズは望遠なのにマクロが撮れるのも魅力です。さらに岩の下を覗いたら、こんなかわいい子がいました。奄美大島と加計呂麻島に生息する固有種、オットンガエルです。
オットンは大きいという意味。なんだか眠たそうな顔をしていたので「ごめんね、ありがとうね」と言いながらシャッターを切りました。そして上を見上げれば、ヒカゲヘゴの赤ちゃん。
芽がぐるっと巻いています。これが開いて葉になり、落ちて、また新しい赤ちゃんが生まれて開いて、という感じでどんどん大きくなり、成長すると20mほどになります。
こんな感じで群落が広がっています。このシーンは動画でも撮影したので、ぜひ雨音にもご注目ください。ソニーは動画の音声も良くて、カメラマンの夫も「音、きれいだよね」といつも感心するほどです。私はショットガンマイクを使っていますが、本当にきれいに音が入ります。最後にお見せする映像作品に入っているので、ぜひ耳を澄まして聞いてみてください。
旅の装備はカメラ2台とレンズ5本。被写体に合わせてベストの組み合わせで撮る
さあ、ここからはみなさんが気になっている機材の話をしましょう。旅に持って行ったカメラは「α7C II」と「α7 IV」の2台です。どちらも有効約3300万画素ですが、「α7C II」の方が少し軽く、AI処理に特化したAIプロセッシングユニットが入っています。

私の写真教室の生徒さんは、だいたいこの2台でどちらを買ったらいいか迷うんですよ。「α7C II」はAIプロセッシングユニットを搭載しているので、動きのある被写体に強い、というところが一番の違いです。飛んでいる蝶もしっかり追随してピントを合わせてくれますし、人間や動物の動きも追ってくれるので、目にバシッとピントが合う。そこがAIの素晴らしいところです。ですから、動くものをメインに撮る場合は「α7C II」がいいかなと思います。そしてレンズもたくさん持って行きました。旅に出る時は荷物を軽くするために2本くらいで行きたいところですが、今回持って行ったのはこの5本です。

一番左は私が愛用している「FE 40mm F2.5 G」。このレンズは缶コーヒーよりも軽い、そして小さい。しかも寄ることができて描写がきれいなGレンズなので、家では常にこのレンズをつけています。飛行機で機内食を撮りたい時にも気軽に撮ることができるので、1本持っておくと便利です。そして、左から2番目は新発売の「FE 28-70mm F2 GM」。このレンズを初めて手にした時は、重さと大きさにびっくりしました。でも実際に持って出かけてみると驚くほど使いやすかったんです。重さや大きさを忘れるほど下から支える手へのフィット感がいい。撮っていると気持ちよくて、F2のGMだから寄れるし、ぼけもとろけるような描写で素晴らしくきれいです。ポートレートなど、極上の作品を撮りたい人は買った方がいいですよ。まずはソニーストアなどで試してみてください。真ん中の白いレンズは、旅を盛り上げてくれる「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」。軽くて比較的小さい、そしてハーフマクロで寄って撮れます。このレンズを旅先で使うと、静止画も動画も肉厚になります。なぜなら70mmでも200mmでも撮れるし、マクロ側でグッと寄ることもできる。例えばお花を撮るときは、50mmくらいの単焦点でふわっと柔らかく見せることが多いですよね。だいたい同じようなトーンで撮り続けている方もいますが、お花を1つ撮るにしても70mmで撮り、被写体から離れて望遠にして、とろけるような背景で撮り、さらにマクロで寄って撮る。この3パターンで撮ることができるので、旅写真がとても華やかになるんです。その右隣はとろけるようなぼけ感が魅力の「FE 85mm F1.4 GM II」。前のモデルより軽く小さくなりました。このレンズはポートレートやワンちゃんなどを撮る方に向いていると思います。そして一番右が「FE 16-25mm F2.8 G」。この広角ズームは小さくて軽くて、寄ることもできます。ソニーには「FE 16-35mm F2.8 GM II」という広角の王様がいますが、これだけ多くのレンズを持っていく場合は、気軽にカバンに入れられる軽い広角レンズが1つあると便利です。とくに旅先ではかなり重宝すると思います。
民宿を営む爺と婆との素敵な出会い。爺が開墾した畑にも奄美らしい風景が
さあ、旅に戻りましょう。奄美では「ルパン爺とすずめの宿」というユニークな民宿に泊まりました。ホームページに優しそうなお父さんとお母さんが写っていて、「ここだ」と即決。到着すると爺がすぐに畑を案内してくれました。そうそう、現地では親しみを込めて、お父さんのことは爺、お母さんのことは婆と呼ばせていただいていたんです。
コロナ禍でお客さんが来なかったときに森だった土地を爺自らが開墾したそうで、タンカンやバナナなどが植えられた素敵な畑でした。そして、その奥にこんな景色がありました。
爺の畑の奥に奄美が詰まっている。ヒカゲヘゴやクワズイモなどもあり、田中一村さんの絵画を思い出しながら「爺、こんな風景を見せてくれてありがとう」という思いでシャッターを切りました。カンヒザクラも咲いていました。
私が訪れた2週間後くらいに満開になるらしく、ぽつんと慎ましげに咲いているカンヒザクラを撮ることができました。そして、爺はこんな場所にも案内してくれて、いろいろなお話を聞かせてくれました。
上の写真は「FE 28-70mm F2 GM」で撮っています。爺に「なんでルパン爺っていう宿名にしたの?」と聞いたら「人の心を盗みたいから」って言うんですよ。「爺、かっこいい!」と思いましたね。「すずめの宿」というのは、「みんなが集まる場所」という意味だそうです。本当に素敵な爺と婆で、夜は婆がつくったおいしい鶏飯をいただきました。
ポートレートと青く透明な海を撮影。レンズの特性を生かしてバリエーション豊かに
夜は爺の案内でアマミノクロウサギを撮りに出かけました。車で山道を進んでいくと「見えるかもしれない」というので、みんなで目を凝らしながら探した結果、8匹くらい見つけることができました。
葉っぱを食べていて、とてもかわいいですよね。夜は爺と婆とお酒を飲みながら楽しく過ごしました。朝になり、私は「爺と婆を撮らせてほしい」とお願いし、大島紬の着物を着てもらって撮影したのがこちらです。
「見つめ合って!」と言って撮らせていただきました。「FE 85mm F1.4 GM II」はきれいなポートレートを撮ることができるので、人物を多く撮る方におすすめです。そして28-70mmに持ち替えて、クワズイモの中で撮らせていただきました。
かわいい爺と婆ですよね。私は美しい風景、おいしいご飯、そして素敵な人々に会うとその土地が大好きになります。奄美大島が大好きになった瞬間です。爺、婆、本当にありがとうございました。そして、きれいな海も撮影しました。1月の奄美大島はだいたい曇っていますが、太陽が出てくるとパッと世界が輝き出します。青く輝く海はとてもきれいで、いろいろなレンズで撮影しました。もう言葉はいらない、という感じですね。
加計呂麻島に移動して海や夕日など魅力的な島の風景を写真に
次は、フェリーに乗って奄美大島の少し下にある加計呂麻島に向かいました。本当に美しい場所で夕日もきれいです。
加計呂麻島では1棟貸しの宿に泊まって、夕飯はケータリングだったのですがとてもおいしかった。女性が運んできてくれたのはこんな料理です。
「FE 28-70mm F2 GM」で撮りましたがきれいですね。夜は雨が降っていたので「朝、晴れたらいいな〜」と思って翌朝窓を開けたら……どんよりしていました。でも、朝ご飯を食べて出かける準備をしていたら、どんどん晴れてきたんです。そして、こんなにいいお天気になりました。
太陽が出ると本当に海がきれいに輝きます。海の水も透明できれいです。島で知り合った女性が「よかったら集落を案内するよ」と言ってくれたので、お言葉に甘えて案内していただきました。下の写真は神道(かみみち)というところです。
風が通り抜けていて、光が本当にきれい。その後、案内してくれた廃校には大きなデイゴの木があったので「登ってもいいですか?」と聞いたら「みんな登っているからいいよ」と言ってくれました。カメラを持って登り、木の上から撮ったのが下の写真です。
この時のレンズはさっき「重い」と言った「FE 28-70mm F2 GM」です。本当にきれいに撮れるので、加計呂麻島ではずっとこのレンズで撮っていましたね。本当に素晴らしいレンズなので、ぜひ試してほしいです。案内してくれた女性は本当にかわいくて素敵な方でした。
そして加計呂麻島といえば、海沿いの小さな集落、武名(たけな)にあるガジュマルです。
神が宿ると言われている巨木で、ここも風が気持ちよく流れていました。
鳥や昆虫を思い通りに描き出す、万能な「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」
さあ、ここからは70-200mmの世界です。まずはグッと寄ってみましょう。落ちたアダンの実の甘さにつられて寄ってきたアリを撮りました。こんなに寄れます。
そして、遠くの鳥もきれいに撮れる。下の写真のメジロもかわいいですね。
下のムナグロはつぶらな目がかわいくてシャッターを切りました。
正直言うと、私はいつも「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」を使っているので、クロップすると600mmまで撮ることができます。でも、このレンズは200mmをクロップして300mmまでしか撮ることができない。ですから「もっと寄りたい」と思った時はトリミングします。トリミング前はこんな感じです。
パソコンでもボディ内でも簡単にトリミングできるので、フットワーク軽く撮って、後でトリミングして仕上げてもいいと思います。
自然が生み出した鳥や蝶の美しい青。ルリカケスと昼間のアサギマダラを追いかけて
私には奄美でぜひ会ってみたい鳥がいました。それはルリカケスという青い鳥です。どこかで会えたらいいなと思いながら旅をしていました。ある時、灯台の上から風景を撮って降りてきたら、聞いたことのない鳥の声がするんです。声がする方を見上げてみると、木々の葉っぱの向こうにバサバサとグレー色の何かが見える。急いでカメラを構えて、いつ出てきてもいい状態で待機していたのですが、別の方向でパサパサっと小さい音が。「何だ?」と思って静かに見てみると……。
いました、ルリカケス。しかも、準備してから5分で撮ることができました。特徴は白いくちばしと尾っぽ。さらに運がいいことに住宅街でも遭遇しました。
そして、私が一番見たかった、昼間のアサギマダラの集団越冬。旅の途中で「この日なら行ける」というタイミングで狙いに行きました。その日は運良く気温が低かったんです。雨風が強かったので「私がアサギマダラだったら、こんな感じでつかまってるな」と想像しながら探してみると……いました。
風に揺れていました。アサギマダラの青い羽、薄い水色で透明な部分もあります。すごくかわいかったです。さあ、ここまで奄美の旅を写真で見ていただきましたが、動画で撮影したシーンもたくさんあります。その動画を1つの映像作品にまとめてみましたのでぜひご覧ください。
今回訪れたのは冬の寒い時期でしたが、春が来たらまた違う姿を見せてくれるのでしょう。私は今回の旅で奄美大島が大好きになってしまったので、ぜひまた行きたいと思っています。アサギマダラの集団越冬を撮れたのは私の力ではなく、島の方のアドバイスがあったからです。カメラ好きの方に出会って、いろいろ教えていただいて撮ることができました。その出会いにも感謝です。素敵な方々との縁を繋ぎ、素敵な写真を撮ることができたのは「α」のおかげです。「α」はそのくらい大切な存在で、かけがえのない相棒だと思っています。みなさんも、旅先の素敵な出会いをαで撮っていただけるとうれしく思います。本日はありがとうございました。
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