
α7 IVで日常をドラマチックに撮る
スナップフォトグラファー 鈴木知子 氏
「CP+2025」でスナップフォトグラファーの鈴木知子氏にお話しいただいた内容や発表作品を、α Universeでも特別にご紹介。「α7 IV」とご自身が常に持ち歩いている2本のレンズ「FE 24-105mm F4 G OSS」と「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」を使い、「ドラマチック」をテーマに撮影したスナップを披露。クリエイティブルックの活用法やドラマチックフォトを撮る秘訣なども語ります。

鈴木知子 / スナップフォトグラファー 神奈川県横浜市出身。東京工芸大学短期大学部卒業後、広告撮影プロダクションに入社。柳瀬桐人氏ほかのアシスタント経験後、コマーシャルフォトを中心に活動。現在フリーランスとして地元横浜に事務所を構え、カメラ片手に日々奮闘中。近年は雑誌への作品提供やフォトコンテストの審査、セミナー講師、写真ハウツー書籍の執筆も行なっている。ライフワークの横浜を中心としたスナップ写真を、ブログにて毎日更新中。http://suzucamera.exblog.jp
ドラマチックフォトを撮るため必要な3つの要素を満たしている「α7 IV」
みなさん、こんにちは。スナップフォトグラファー鈴木知子です。今日は「α7 IV」で撮った写真をたくさん持ってきましたので、時間が許す限り多くの写真をお見せしたいと思います。私は発売から3年以上も経つ「α7 IV」をメインカメラとして使い続けていますが、今のところ欠点はまったく見つからない。そのくらい気に入っているカメラです。そして今回、セミナーのタイトルに「ドラマチック」という言葉を使いました。私は映画やドラマの1コマように前後のストーリーを感じさせるような写真を撮りたいと意識してスナップしているので、ドラマチックをテーマに作品を集めてみたわけです。「ドラマチックフォト」について、私なりにいろいろ考えてみました。シーンや被写体は絶対的なものになりますが、やはり光・色・構図、この3つは重要なポイントになると思っています。

「光」はダイナミックレンジ。ダイナミックレンジが広いことで白飛びや黒潰れがしづらく、階調豊かな表現が可能になるということです。そして「色」。ソニーの画づくりのプリセット「クリエイティブルック」を使いこなすことで自分のイメージに近い写真を撮ることができます。そして「構図」は、あえてAFと書きました。AF性能が良ければピントをカメラ任せにでき、自分は構図やシャッターチャンスに専念できます。この3つの要素を満たしてくれるのが「α7 IV」です。

今回のセミナーでお見せする写真は、2本のレンズで撮ったものに絞りました。標準ズームの「FE 24-105mm F4 G OSS」、そして望遠ズームの「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」です。この2本は必ずといっていいほど持ち歩いています。
「FE 24-105mm F4 G OSS」が描く世界。逆光で撮るとよりドラマチックに
まずは「FE 24-105mm F4 G OSS」で撮影した写真からお見せしたいと思います。「CP+」はパシフィコ横浜で開催ということで、私の生まれ育った地元横浜の写真を多めにピックアップしました。私が都市スナップをメインに撮り始めたのも「自分の生活圏で作品をつくる」というところが出発点なんですよ。
上の写真は光をドラマチックに表現したものです。24mmで撮影していますが、個人的に大好きな焦点距離で、24mmスタートのレンズにこだわっています。広角レンズは遠近感が生まれるためインパクトのある画が撮りやすいのが魅力です。クリエイティブルックはコントラストがありつつも彩度を抑えて緑や青を印象的に見せてくれる「FL」に設定しました。私の好きなクリエイティブルックで、空を多めにフレーミングする時は「FL」を使うことが多いです。こちらはテレ端の105mmで撮影したトンネルの写真です。
このレンズはF4通しですが、開放で撮ってもかなりぼけ感が強く出るのが特徴です。私はぼけ表現が大好きですが、状況を説明するためにピントも合わせることも必要になるので割とF値を変えながら撮影しています。この写真はぼけ感をみなさんに見ていただこうと思って選んだ1枚です。こちらもクリエイティブルックは「FL」で撮っています。
上の作品は、ガラス越しに見えるサーフボードを意図的に写し込みました。今でいう「匂わせ」と言いますか、ちらっと見せることで写真の前後のストーリーを表現したいと思ったので。壁がブルーだったのでこの写真も「FL」で撮影しています。今回は「ドラマチックフォト」というテーマで写真をセレクトしたため、逆光で撮ったものが多いです。みなさんもドラマチックな写真が撮りたいと思ったらぜひ光に注目して、逆光でも撮影してみてください。人物を入れるとシルエットになり、シーンのスケール感も伝えやすくなると思います。
最短撮影距離0.38mでテーブルフォトにも最適。被写体を手に持って手持ち撮影もできる
テーブルフォトでも「FE 24-105mm F4 G OSS」はマルチな活躍をしてくれます。最短撮影距離が0.38mなので、着席した状態でスマートにテーブルフォトの撮影が楽しめるのも魅力です。おしゃれなカフェなど、立ち上がって撮るのが恥ずかしい場所でも座ったままで簡単に撮ることができます。
上の写真はサイドからの光が描くドラマチックな影を入れてスナップしました。「FL」はこういった雑貨などの撮影でも雰囲気のある写真に仕上げてくれます。
上はランタンナイトに出かけた時に撮ったものです。私はきれいに撮るだけでなく、少し自分のテイストをプラスして遊ぶことも意識しています。これは、その時にかけていたサングラスにランタンを写し込んだ1枚です。「FE 24-105mm F4 G OSS」なら、自分の手でサングラスを持って手持ちで撮れる。この写真からも表現の自由さを感じていただけるのではないでしょうか。
今日ご紹介する写真の中で、一番撮るのが難しかったのが上の写真です。江ノ島の地下道から上がるところでコントラストが強かったのですが、暗い階段の部分もしっかり階調が出ているのがわかりますでしょうか。この部分を黒潰れなく撮れたことで、「α7 IV」のダイナミックレンジの広さを改めて実感できました。そして、右側の壁には空の青が映り込んでいる。自分としてはこういった「小さな気付き」がシャッターチャンスであり、個性を出すポイントになっていると思っています。
彩度が高いクリエイティブルック「VV」は風景写真や青を印象的に見せたい時に活用
ここからはクリエイティブルックが「VV」になりました。「VV」は彩度とコントラストが高めで、自然風景などに合わせやすいルックです。上の写真は波しぶきですが、後の岩が暗くならないと波しぶきが目立たないので、コントラストをつけるために「VV」を選択しました。「FL」もコントラストはありますが、自分の中では青の発色をポイントに選ぶようにしています。「VV」はブルー、「FL」は少しシアンに寄った発色をする感じなので。個人的には自然風景では「VV」を選ぶことが多いです。
本来はシンメトリーで撮りたいけれど、そうすると入れたくないものが画角に入り込んでしまう、という場合があります。臨港パークで撮影した上の写真がその一例で、この時は人物を右上に入れることで構図のバランスを整えました。この写真、橋の上と下で空の色が違うのがわかるでしょうか。日没後はこういう面白い画が撮れるんです。この空の色を深く表現するために「VV」で撮影しました。
こちら写真は、ベンチの仕切りにピントを合わせて全体的にぼけ感を生かして撮っています。それでもF値はけっこう絞っているんですよ。ぼけは単純にF値だけで測れるものではありません。F値と焦点距離の長さ、被写体までの距離、被写体から背景までの距離、すべてがミックスしてぼけをつくります。この時はピントを合わせつつ全体的にぼけを入れることで非現実感、幻想的な雰囲気を表現することを意識しました。空がベンチに映り込んでいるので、ブルーの色を重視してルックは「VV」にしています。次は私にしては珍しい風景写真です。昨年から自然のフィールドに出ることも多くなってきました。
上の写真を「VV」で撮影したのは、水の青も、木々の緑も美しくて本来の色を見せたいと思ったからです。この日は薄曇りであまりコントラストがなかったので、高コントラストになり黒を締めてくれる効果も期待しました。薄曇りの日には「VV」を使うと印象が変わりますので、ぜひ使ってみてください。
そしてこちら。私の都市スナップはちょっとだけ変わっていると思います。見たままを撮る、というよりは自分フィルターをかけて撮りたいと思っているためです。上の写真はレインボーブリッジの下から撮ったもので、額縁構図にして風景を囲んだ1枚です。このように橋の下で撮った写真が多いのですが、実は橋の下は逆光をつくりやすいんです。額縁構図は縁が黒い方が効果的なので、手すりがシルエットになるように「VV」で撮影しています。
「ST」は見たままのフラットな雰囲気を表現。色でなくシーンを強調したい時にも便利
上は初日の出を撮りに行ったときの朝焼けの写真です。人物を前後に配置してリズミカルに見せています。クリエイティブルックは「ST」に設定しました。朝焼けや夕焼けは元々ドラマチックな色を持っているので、必要以上に色を強調しない「ST」というルックで撮ることが多いです。次の写真もそうですね。
電車に乗っていたら急に空が焼けてきたので飛び降りました。夕焼けは撮る場所によって画が変わるので、駅で撮れてよかったと思います。プラスアルファの要素を入れることで状況説明ができ、ストーリー性を埋め込むことができる感じがするので私らしい夕焼け写真が撮れたかな、という1枚です。
上の写真は横浜ハンマーヘッドという場所で撮影しました。鉄骨を額縁にして、大型客船が出航する風景を捉えています。ここもフラットにシーン自体を強調したかったので「ST」で撮影しました。船にかかる影が実にドラマチックですよね。こういったものを見逃さずに皆さんもシャッターを切っていただきたいと思います。
上の写真はかなり離れた場所からスポット的に船に光が当たっているシーンを撮りました。船を主役にするにしてもアップでは周りの状況を入れられないのでストーリーを伝えづらくなります。最近はこのように少し離れたところから風景を捉えることにハマっていまして、見る人にイメージを委ねるような作品を撮るようにしています。
このステンドグラスは階調の豊かさを見ていただきたい。どちらかというとステンドグラスではなく、ステンドグラスを透過した光をメインにしているんですよね。こういった光は白飛びをしてしまうと色が出ない。色を表現しなければならないこのシーンでは、ダイナミックレンジの広さやフルサイズセンサーの優秀さが見てとれます。
彩度が低くマットな質感になる「IN」はレトロな雰囲気を演出できる
上の2枚の写真はクリエイティブルックを「IN」にしています。「IN」は彩度がおとなしめでマットな雰囲気になるので、レトロな風景に使うことが多いですね。昔ながらの純喫茶や老舗のライブハウスなどはあえて「IN」を使います。
上の写真で設定している「SH」は透明感があり、明るく鮮やかに仕上げてくれるルックです。柔らかさも加わるため、お花などにも合うルックですが、今回は雑貨を撮影して玉ぼけを柔らかく表現したいと思い「SH」を選びました。
こちらは三脚に固定して、露光間ズームというテクニックを使って撮った1枚です。露光している間にレンズのズームをギュインと回すと、このような面白い写真が撮れます。クリエイティブルックは「VV2」です。「VV2」は鮮やかで明瞭度が高いという特徴があります。
表現力が幅広くダイナミックな写真も撮れる「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」
ここからは望遠ズーム「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」で撮ったスナップです。望遠ズームは背景がぐっと近寄ってくる圧縮効果で、ダイナミックな写真を撮ることができます。
上の写真は雲をしっかり見せるために空を大きくフレーミングしました。空の青を生かすためにルックは「VV」で撮影しています。
こちらは車に映った夕景がメインなので、ギラギラした金属感を出すために「VV」にしました。
上の写真は引きの画ですね。望遠ズームを使うとどうしても被写体に寄ってしまいがちですが、遠いところから捉えるにもいいレンズです。この時は多摩川の橋の下から、人物のシルエットを入れて撮影しました。使い方次第で表現の幅が広がるレンズなので、個人的には標準ズームと同じような感覚で使っています。
上の写真はイルミネーションを映し込んだ水たまりをAPS-Cモードで撮っています。このようにクロップ撮影しても解像度を担保できるのがフルサイズのメリットです。私はいざというときにAPS-Cモードで撮れるように、マイメニューにセットしています。画質が1400万画素相当になりますが、高画質を保っているのがわかりますよね。
鳥や動物に対応した瞳AFを使えばピントはカメラ任せで撮影に集中できる
こちらは鳩ですね。鳩も私にとっては良い被写体で、横浜駅の近くの高い商業ビルにいたところを捉えました。鳩は日常感が強いので、あえて風になびいた輪郭を強調するためにシルエットで撮っています。
私はあまり動体撮影をしませんが、カモメも撮ってみました。トラッキング機能を使って連続撮影しています。そして鳥対応の瞳AFを入れることで、ちょっと厳しい体勢でもしっかりと目にピントを合わせてくれる。「α7 IV」を使えば、誰でも簡単に躍動感のあるカモメの写真を撮ることができます。
猫の撮影では動物対応の瞳AFを活用しました。ピントをカメラ任せにすることで、猫の表情や仕草に集中することができます。この望遠ズームはテレコンバーターにも対応しています。下の写真、影がきれいじゃないですか。これは絶対に撮りたいと思って2倍のテレコンバーターとAPS-Cモードを使って、影を大きく捉えました。
「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」はレンズ名に「マクロ」と付いています。正確にはハーフマクロで最短撮影距離はワイド端で0.26m、テレ端で0.42m。望遠ズームでもかなり寄って撮れるので、テーブルフォトでも活躍してくれます。
望遠ズームは広角側で撮ると違った表現に。「FL」は静かな時間を演出する時に最適
そして望遠ズームを使う場合、割と下の写真のようなイメージが多いですよね。ひまわり畑に行ったら大きく花を捉えて後をぼかす。
でも望遠ズームは表現力が豊かで、同じ場所でも下のようなまったく違う画をつくることもできる。
F4ですが、けっこうきれいにぼけますよね。真ん中の辺りにピントが合っていますが、背景がきれいにぼけていて、このぼけ感も大きな魅力です。これも200mm相当で撮影をしています。
こちらはトラッキングを使いました。私のこだわりは手の影がカバンに落ちているところです。小さなドラマですが、こういった瞬間を見逃さないためにもピントはカメラ任せ。ソニーのAF機能を信頼しているからこそ撮れた1枚だと思っています。
上の写真はクリエイティブルックを「FL」にして撮影しました。「FL」は少し彩度が落ちるので、静かな時間を表現する時にも使えます。影の部分がどうしても青くなるので、その色をコントロールするためにもFLを使って影を水色っぽく表現しました。
こちらは江ノ島の橋の下から逆光を狙って撮った1枚です。人物をシルエットにするとともに、水面の質感が強調されている。逆光は色がはっきり出ずに薄くなるので、逆光のシーンこそ自分のお気に入りのルックを使ってみてください。自分で色味をつくるのも楽しいものです。
これはテーブルフォトですね。私は「FL」と赤の組み合わせが大好きです。彩度が落ち着いて大人っぽい赤を表現できるので、こういった赤を見たら私のことを思い出していただき、クリエイティブルックを「FL」にして撮影してみてください。望遠ズームは大きな前ぼけを印象的に表現できるので、手前にあった同様のグラスを大きくぼかして撮った1枚になります。
ビーチで上の写真を撮った時は、かなり風が強くてモヤがかかっていました。すっきりしない不穏な感じだったので、非現実感を演出するためにルックは「FL」を選択。「FL」にしたことでコントラストが高くなり、影をしっかりと黒く表現できました。影は被写体の存在感を強調してくれるものだと思うので、撮影時は影の表現の仕方にもこだわっています。
色を派手にするかどうかが表現の別れ道。シーンを印象づけたい場合は「ST」を選択
これもザ・逆光ですね。先ほども言ったように逆光は色が出にくいですが、それを逆手にとって表現に繋げるのもひとつの方法です。個人的には「ST」を使うことでダークセピア調、無彩色に近い状態になるところがとても気に入っています。色を派手にするか、しないかというところが、表現の別れ道のような気がしますね。私は彩度に頼らず、色以外に見せたい意図があるときには積極的に「ST」を使います。
こちらは橋の上で撮った1枚です。日没後のブルーモーメントに入りかけている時間帯は空と人工光のバランスがとりやすくなります。車のテールランプの赤い映り込みもいいですよね。この絶妙な時間が私は大好きです。人工光はけっこう難しくて、上のライトも白飛びするかしないかのギリギリ。でも「α7 IV」が階調豊かに捉えてくれるので、安心して撮影できました。そして、こちらが最後の1枚です。やはりドラマチックフォトといえば夕焼けは鉄板でしょう。
撮影場所は江の島。こういった撮影では太陽を直接入れ込んでしまうとどうしても白飛びしがちなので、私はできるだけ太陽をフレーミングしないようにしています。望遠レンズがあれば太陽を避けて自分好みの構図をつくることができるので、こういったシーンこそ望遠レンズが欠かせないなと思いながら撮影をしていました。さあ、鈴木知子の都市スナップ、いかがでしたでしょうか。皆さんもぜひソニーのカメラやレンズを持って、ドラマチックフォトの撮影を楽しんでいただきたいと思います。本日は最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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