
野生との距離が近づく――FE 400-800mm F6.3-8 G OSSが捉えた命のディテール
自然写真家 寺沢孝毅 氏

寺沢孝毅 / 自然写真家 自然写真家。北海道生まれ。22歳のとき移住した天売島に住み続ける。海鳥の保護活動を続けながら、天売島を「小さな地球」に見立てて撮り続ける。また、海鳥や海棲哺乳類を通して極地から熱帯まで海洋環境を取材する。地球の素顔を伝えるトークや展示活動を積極的に展開中。『ギアナ高地 謎の山テプイ』、『BIRD ISLAND TEURI』など著書多数。近年は映像作品を自然番組などへ提供する。
「軽さ」と「操作性」に驚いた第一印象
このところずっと、800mm望遠レンズを持っていなかった私にとって、待望のレンズでした。ずしりとした重量感を覚悟していましたが、800mmとしては”軽い”という印象で、手持ちでいけると思いました。実際にボディを付けて使ってみると、ピントやズームリングのトルク感が心地よく、インナーズームでバランスの良さを感じました。
超望遠ズームならではの表現力と撮影の幅
私が800mmレンズに期待するのは、圧倒的な望遠力です。例えばゴマフアザラシの作例のように、体の一部分に迫って、つぶらな瞳や鼻、髭などを大きく見せて愛らしさを強調する撮り方をしたいと考えます。トリミングせずにそうした表現が実現でき、動画撮影ではズームで寄る表現ができます。また、ズームレンズの大きなメリットとして、800mmで岩に上がったシノリガモを大きく撮影しつつ、400mmのワイド端側で周辺環境を入れた撮影もレンズ交換なしでできるのです。
手持ち撮影にも応える軽量設計
干潟でシギ類の撮影では、機材を三脚に乗せて撮影しました。でも、不意に飛び立ったホウロクシギを追うときは、素早く手持ち撮影に切り替えました。その方が、圧倒的に機材をコントロールしやすいからです。私は、特に腕力がある方ではないですが、α1 IIに800mmを装着し、何度も繰り返して、手持ちで撮影しました。また、車をブラインド代わりにして、窓からレンズを出して撮影する場合にも活躍するレンズです。
高精度な解像力でウミネコのディテールを鮮明に捉える
色の滲み、像の流れや歪みなどで問題になることはありませんでした。ウミネコの顔の美しさを強調するために、2X テレコンバーターを装着して1600mm相当で2羽の顔に迫ってみました。ピントを合わせた奥のウミネコの目や、その周りの羽毛の細かなディテールが表現できていて、しっかり解像していることが確認できます。
遠距離撮影とトリミング耐性の高さが魅力
遠距離撮影は、超望遠レンズの力の見せ所です。シャープに撮影した画像のトリミングはまったく問題なくできますし、高画素機での撮影ならトリミングがさらに有利にできます。注意すべきは、被写体までの距離が遠いほど、その間の空気の温度差などで陽炎のような悪影響が撮影結果に反映されやすくなります。被写体へ配慮しながら、できるだけ距離を詰めたうえで撮影する工夫も大事です。
近接撮影でも実力を発揮する高い汎用性
ウソやメジロなどが集まるサクラの花がとても美しかったので、花自体を1.7mの距離から400mmで撮影してみました。花にずいぶん寄った感覚で、雨のあとに光を浴びるサクラを玉ぼけをいかして撮影しました。野鳥を撮影するレンズで、フィールドに咲く花々も撮影できるのは便利です。
1600mm相当でとらえた、朝日の圧倒的な存在感
4Kの動画から切り出した、水平線から昇ったばかりの朝日です。800mmに2X テレコンバーターを装着して1600mm相当で撮影しました。もちろん三脚は必須です。画像いっぱいに映った迫力ある太陽が、刻々と動く様子を記録しました。切り出した静止画からは、太陽周辺の空気が熱で揺れている感じが伝わってきます。さらにAPS-Cクロップにすると2400mm相当で撮影することができ、特に動画撮影では有効に使えそうです。

11枚羽根が生む、自然で美しい玉ぼけ表現
ぼけ味を確認するために、水面の光を背景に飛ぶウミネコを撮影しました。この作例のような自然な美しい玉ぼけは、様々な他の場面でも撮影して確認できました。11枚の絞り羽による円形絞りが、功を奏した結果だと思います。
太陽光との対峙で見せた、高い逆光耐性
群飛するウミガラスをファインダーに入れて追いかけ、太陽が入った瞬間にシャッターを切りました。強い太陽光を、望遠レンズを通してファインダーから見続けないよう注意しました。鳥も太陽もぶれないようシャッタースピードは高速の1/6400秒に設定し、ワイド端400mmで撮影したので絞りは開放のF6.3、ホワイトバランスはオートに設定しました。露出補正をー1/3として太陽の輪郭が失われないようにし、鳥の飛翔と太陽がスッキリと浮かび上がりました。強い光に対してもフレア、ゴーストがしっかり抑えられるレンズであることがわかりました
動体撮影で実証された驚異の追従性能
このレンズが、小鳥の飛び立ちの瞬間をどこまで追えるのかをテストしました。α1IIボディのプリ撮影機能を使い、リアルタイムトラッキングのフォーカス設定で秒間30コマ連写で撮影しました。作例は、シャッターが起動してから5カット目の画像です。ジョウビタキがフレームを外れるまでの12カットすべてで、高精度にフォーカスが鳥を追従していて、そのほとんどが鳥の目にしっかりピントがきていました。このレンズの、動体を追従するフォーカス精度が高いことを確認しました。
希少種の撮影における高精度な撮影
ヤツガシラは国内では珍しい鳥で、私は、静音なEV車で30mほどまで近づきました。最初は車窓からレンズを出して撮っていましたが、舞う雪や背景をきれいに入れたいと思いました。非常にゆっくりと車のドアを開け、そのドアに隠れながら車にもたれて低く構えて、虫を捕らえた瞬間を撮りました。800mm望遠と高画素機α1 IIの組み合わせなので、無理に近寄らずに撮影できました。
FE 400-800mmがいきるおすすめの撮影シーン
野生生物の撮影には、必携のレンズだと思います。被写体が小さくて近づきにくい野鳥撮影には、常に威力を発揮するでしょう。私なら、被写体の顔、特徴的な模様や色、求愛などの行動にグンと迫って撮りたいときに、勝負のレンズとして選ぶ1本です。特に動画撮影では、あっと驚くような寄りの表現が可能となり、作品にメリハリと力強さを加えることができます。1本のレンズが400mmから2400mmまでの望遠力を持つ魅力は計り知れず、表現の幅が大きく広がることは間違いありません。
軽量で扱いやすい超望遠レンズでは春・夏の撮影を楽しんでほしい
FE 400-800mm F6.3-8 G OSS は、800mmレンズとしては軽量です。動く被写体を、手持ちで追随しながら撮影できる超望遠です。野鳥などの野生生物が活発に動く春から夏、この超望遠を使って、自分の表現に新しい世界を加えてみてはいかがでしょうか。
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