
私を虜にするG Master 〜美しい黒を語る
写真家 清家道子 氏
「CP+2026」で写真家の清家道子氏にお話しいただいた内容や発表作品を、α Universeでも特別にご紹介。清家さんが最近気に入って使っているG Master4本をピックアップし、それぞれの魅力や活躍するシーン、活用法などを語ります。
清家道子 / 写真家 福岡生まれ。カラーコーディネーターを経て風景写真家となり、九州を中心に撮影活動している。現在企業カレンダーを手がける他新聞、写真雑誌への寄稿、カメラメーカーでの講演、撮影会などを行っている。写真展2016年「またまの宇宙」をリコーイメージングスクエア2020年「純色風景」ソニーストア2022年「光の記憶」ソニーストア2024年「水の惑星」OMシステムギャラリー2024年「美しき里・豊後高田」豊後高田市主催写真集2016年「またまの宇宙」(日本写真企画)2017年「TheGiftOfRanunculus」(風景写真出版)著書「美しい風景写真のマイルール」(インプレス)「極上の風景写真フィルターブック」(日本写真企画)「フォトグラファー直伝フィルター撮影スーパーガイド」(日本写真企画)2020年よりYouTube 清家道子チャンネルで風景写真、風景ショートムービーなどを配信中。https://www.youtube.com/@michiko_seikeαアカデミー講師 OMゼミ講師JPS日本写真家協会会員清家道子フォトアカデミー主宰
薄暗いシーンでも色鮮やかに写し出し
黒を締める「FE 28-70mm F2 GM」の表現力
よろしくお願いいたします。写真家の清家道子です。今日ご紹介するのは、私の機材、高画素のカメラ「α7R V」と、最近、私が虜になっているレンズになります。
去年、F2通しのすごいズームレンズが出ましたよね。これに今、すごくハマっていますので、その愛をお伝えできたらと思っています。今回、ご紹介するレンズは「FE 28-70mm F2 GM」「FE 50-150mm F2 GM」、それから「FE 100mm F2.8 Macro GM OSS」、広角の「FE 14mm F1.8 GM」、4本のG Masterです。私も長く写真を撮っていますが、「いいレンズってどういうものなのかな」と思った時に、最近、気がついたんですよ。いいレンズは、黒がとても美しいんです。ぜひ、そんなところにも注目しながら私の作品をご覧いただければと思います。
上の写真は、長崎県にある長串山公園で撮影した奇跡の絶景です。太陽が沈んだ直後の薄暮の時間をブルーモーメントといいますが、この時間帯に撮ると、実は色が出にくいんです。花の色もこんなに鮮やかに出ないものですが、「FE 28-70mm F2 GM」は暗くなっても色がきれいに出ます。公園のツツジの色もきれいに出ていて、この画を見た時は本当に感動しました。遠くには街明かりや船の灯りが見えていますが、影の黒い部分がとても締まっていて、「このレンズ、ひょっとして黒がきれいなんじゃないかな」と、この1枚を見て思いました。
上の写真は先ほどの写真の少し前、太陽が沈みゆくシーンですが、雲海が出ています。実は夕方に雲海が出ることはほぼありませんが、この時は夕日が沈むにつれてどんどん海霧が出てきて、雲海になってきたんです。長串山公園は私が毎年通っているお気に入りのスポットですが、雲海が出たのはこの時が初めて。この絶景をお気に入りのカメラとレンズで撮ることができて、とても感動したことを覚えています。
横で撮ったら、必ず縦でも撮ります。ピントは手前1/3ぐらいに合わせて、上半分はハーフNDフィルターをかけて少し暗めに撮りました。この日は二度と出会えない絶景をたくさん撮ることができました。どれもしっかりと撮ることができて、本当に良かったです。
九州の湖で「寄せ氷」を撮影。
七色に見せるポイントは光の入り方
今回は「FE 28-70mm F2 GM」で撮影した作品を持ってきました。冬に見られる九州の美しい風景も撮ってきましたので、皆さんにお見せしたいと思います。
九州というと南に位置するため暖かいイメージがあるかもしれませんが、上のような写真も撮ることができます。長野の諏訪湖では「寄せ氷」といって、凍結した湖面の氷が風や波の力で割れて岸辺に押し上げられる自然現象が見られるそうですが、大分県にある志高湖でも、年に1、2回、寄せ氷が見られるんです。寄せ氷を見つけるポイントは、まず結氷すること。結氷した次の日に溶けて風が吹くと、溶けた氷が風にのって打ち寄せられ、このような寄せ氷を撮ることができます。今年も寄せ氷があってよかった、と思い、「α7R V」に「FE 28-70mm F2 GM」を装着して手持ちで撮りました。地面の泥がやわらかくて、三脚を立てると沈んで汚れてしまいそうだったので手持ちで撮影。「α7R V」はカメラ内手ブレ補正が約8段分ありますから「なんとか大丈夫だろう」と思って、まず1/80秒で全体像を撮りました。
さらに追い込んで表現したのが上の1枚です。黒をきれいに表現できると、薄氷の透明感もきれいに見せることができます。これを撮った時、改めてこのレンズのよさを感じることができました。よく見ると、七色になっているのがわかりますでしょうか。寄せ氷は見る角度によって七色に光るんです。太陽が向こう側に沈み始めている状況だったので、C-PLフィルターを回しながら、どこが一番いいのか、構図を吟味して撮っています。
このような状況では、三脚を立ててしまうと氷を割ってしまう可能性もあるので、手持ちでの撮影がおすすめです。手持ちでも氷を割らないように気をつけながら、手ブレしないように、そして光の角度を考えながら、七色が一番きれいに見えるところを見つけて撮っていきました。
上の写真を撮る時は右側に太陽が沈んでいたので、さらに七色に輝いてきました。七色氷を表現するには太陽の角度が必要です。太陽の光が45度くらいの角度で斜めに入ると、このような七色になります。田舎に行くと畦道に張っている氷が七色になっていることがありますよね。ただ、肉眼では見えづらいので、カメラを向けてC-PLフィルターを回しながら探してみてください。この時もフィルターをつけて、ファインダーで七色氷を探しながら撮影しましたが、「α7R V」のファインダーは944万ドットととても見やすいので非常に便利でした。
上の写真はアートのように切り取った1枚です。こちらも黒の美しさ、色彩の美しさが冴える「FE 28-70mm F2 GM」ならではの表現だと思います。
こちらが最後の寄せ氷です。地平線に太陽が沈むギリギリのところで、七色氷が鮮やかに見えてきました。やはり斜めの角度というのが大事なんだなと、思いつつ撮っていると、あっという間に太陽の光がなくなり、氷の七色は消えてしまいました。七色氷の撮影に限ったことではありませんが、皆さんも写真を撮る時は必ず太陽がどこにあるのか確認して、どんな角度で光が当たり、どこに立つといいのか、といったことを考えながら撮るといいと思います。
立ち位置を変えて逆光で撮ると
同じ景色でも表情が違って見える
せっかくなので、ほかにも九州の冬の風景をお見せしたいと思います。こんなにすごいところもあるんですよ。下の写真は大分にある東椎屋の滝です。ここは毎年凍るので、冬には必ず訪れています。
ここも三脚を立てられなかったので手持ちで撮影しています。1/80秒くらいであれば大丈夫です。皆さんも手持ち撮影では何秒くらいならブレずに撮れるか、自分で確認しておいた方がいいと思います。三脚が立てられないから諦めるのではなく、皆さんのお持ちのカメラの手ブレ補正がどのくらいあるのか確認しながら撮っていけば、いろいろな撮影に挑戦できると思います。
撮影の際は光が大事なので、「逆光で撮ったらどうだろう」と位置を変えて撮ったのが上の写真です。太陽の位置が先ほどは後からだったので、逆光で撮ろうと反対側にまわり、つららに太陽を当ててみました。こちらの方が立体感が出て、氷の表情も美しいですよね。ここでは三脚を立てることができたので、じっくりとF16、1/4秒で撮影。シャッター速度は1/4秒なので水面に輝く太陽の光も滑らかですし、F16なので手前から奥までピントが合っています。三脚を使ってじっくり風景を撮るのは、本当に楽しいです。
黒と光を意識しながら表現する
四季折々の九州の大自然
続いては、闇の中で見つけた光です。やはり黒がきれいなのでこういう表現をしたくなるんですよね。
鹿児島県にある長野滝です。小さな滝ですが、撮り方によってはすごく面白い滝なんですよ。ここには何度も来たことがあるので、いつもとは違う撮り方ができないかと思い、黒と光を意識した写真を撮ることにしました。立ち位置を変えながらいい場所を探していると、ちょうど滝の真上から光が差し込んでいて。「これは美しい」と思って、黒を強調できるようにアンダー気味に高速シャッターで撮りました。最近は撮る時に「プリントしてこんなふうに飾ったらどうかな」と、いろいろイメージして撮るようにしていて、これは掛け軸をイメージして撮った1枚です。
滝の全貌をお見せすると、こんな感じです。この時に意識したのは光です。最初は右側から撮っていましたが、「立ち位置を変えたら面白いかもしれない」と思い、「FE 14mm F1.8 GM」で撮っています。このレンズの良さは、太陽の光条がとてもきれいに出るところです。これを撮りながら「28-70mmの出番だな」と思い、レンズをつけ替えてアンダー気味に撮ったのが先ほどの写真になります。
こちらは大分県の福貴野の滝です。いつも紅葉情報を見て、いい時期を狙って行くのですが、去年の紅葉はあまりきれいではなかったんです。それでも「FE 28-70mm F2 GM」を持って行ってみたところ、やはり色づいてはいなかったのですが、わび・さびのような渋い感じだったので「このレンズならいけるかも」と思って撮影しました。派手ではありませんが、黒を美しく見せてくれるレンズなので幽玄で渋い雰囲気を写し取ることができ、お気に入りの1枚に仕上げることができました。向こう側はまだ紅葉していなくて、上の方は紅葉する前に枯れかけていましたが、いいレンズで撮ってあげると深みのある写真になるんですよね。朝もやがスーッと出てきて、滝に奥行き感を与えてくれて。豪華絢爛な紅葉もいいですが、あまり色づいていない紅葉も印象的に撮れるんだな、と感じました。
上の写真は九重の麓にある雄池で撮影した1枚です。ここは国立公園なので、木が倒れても人の手を加えないんですよね。火山灰の黒い土がすごくいいんです。この黒い土と枯れた木々、その向こうに終わりかけの紅葉があって、本当にいい感じでした。ピントは手前の木の少し向こう側の木に合わせて、F16のパンフォーカスで撮っています。
そして、カメラを上に向けると、上の写真のような風景が広がっていました。28-70mmのズーム域は手前から奥まで撮ることができる、とても便利な1本です。少しホワイトバランスを青み寄りにして、すぐそこまで来ている冬を表現しました。
F2なので、天の川も撮れます。私がアマチュアの時は明るいレンズを持っていなかったので、F4で天の川を一生懸命撮っていましたが、F2なら標準レンズでこんなにきれいに撮れるんだ、と感動しました。これを撮影した山口県にある角島は、灯台のサーチライトと一緒に天の川を撮ることができるスポットです。天の川は真っ暗でないと撮れないと思っていたのですが、「このレンズであれば光が入っても撮れるんだ」とちょっとうれしくなって、紹介させていただきました。
何気ない風景も画にしてくれる
表現が多彩な「FE 50-150mm F2 GM」
次は「FE 50-150mm F2 GM」で撮った作品をご紹介します。最近は必ず撮影に持って出かける、とてもいいレンズです。50-150mmのF2通しは、私も経験がなかったのですが、いろいろな表現ができます。
こちらは九重の長者原(ちょうじゃばる)というところで、雪をぼかしながら撮影しました。こういったさりげない1枚もいいですよね。このレンズは黒もきれいですが、中間色の表現も素晴らしいです。ほぼJPEGの撮って出しで、背景の水色は山の影の色を利用しています。そして、F2で雪の玉ぼけを意識して撮っています。冬になり、ススキの穂がかろうじて残っている、寒々しい様子を写しました。そして、同じレンズでこんな表現もできます。
「FE 50-150mm F2 GM」であれば、先ほどのような写真も撮れるし、このように引いて全体の寒々しい風景も撮ることができる。私はよく「レンズ1本勝負」というのをやるんですよ。「今日はこのレンズで撮る。これ以外はつけない」と決めて、絶対にこのレンズでいい写真を撮ってやる、という感じで撮影に挑みます。レンズ1本で勝負するのも、私はいい方法だと思います。簡単に諦めてレンズを取っ替え引っ替えせず、徹底的にそのレンズの良さを見つけてあげる、という撮影スタイルが、私は好きです。
黒がきれいなレンズは、雑草さえも画にしてくれます。上の写真は、由布院の金鱗湖で撮った雑草です。もやが出てきたのですが、もやの写真は撮り飽きているので「何か違う雰囲気で撮れるものはないか」と被写体を探していました。朝もやに日の光がキラキラ輝いていたので、そこを「FE 50-150mm F2 GM」で切り取ったところ、太陽が映った池のまわりにいい虹色が出て本当にきれいでした。さらに、立ち位置を変えて撮ったのがこちらです。
こういう写真もいいですよね。望遠レンズだからといって遠くのものを撮るだけでなく、足元の小さなものにも目を向けてみてください。このレンズなら、色がきれい、黒がきれいなのでかっこいい1枚に仕上げることができます。
望遠では視線の先を意識して、
様々な思いをのせて撮影
もちろん、鮮やかな色も得意です。去年は紅葉があまり良くなかったので、行った時にはほとんど散っていましたが、一番いいところだけを「FE 50-150mm F2 GM」で切り取り、着物の柄のようなイメージで撮りました。紅葉を撮影しに行って何もないと思ったら、ぜひ望遠レンズで切り取ってみてください。望遠レンズは撮影者の視線、つまり「私はここを見ています」ということを表現できるので、風景撮影では望遠レンズが必須です。
上の写真は、「FE 50-150mm F2 GM」で撮った桜と雲海です。雲海が出ることで有名な大分の安心院(あじむ)町で撮影しました。春は雲海が出ないものですが、雨が降った翌日だったら雲海が出るのではないか、桜と雲海を一緒に撮れるのではないかと思って行ってみたら、出てくれたんです。
上の写真は広角レンズを使っているように見えますが、50mmでここまで撮れます。この日も1本勝負をしましたが、いろいろな画を撮ることができました。
上の写真は宮崎県の都井岬で撮影しました。ここは「自然をそのままに残す」ため、野生馬も江戸時代から人間の手を介さずに自分たちの力で生きています。前日、大雨が降った時に子供が生まれて、弱っている子馬が右端に写っているんです。母馬が心配そうに子馬を見ていて、その後ろから監視員が見守っているという風景で。手前の倒れてしまった古木と、その様子を撮るために50-150mmを使って撮影しました。「自然に生きるというのは、こういうことなんだな」と思って、胸が締めつけられるような思いで撮った1枚です。
今度は、この古木を14mmの広角レンズで撮影しました。やはり迫力がありますよね。14mmの単焦点は本当にいいレンズです。
大分県にある龍昇の滝でも、このレンズで撮影してみました。このような表現は14mmでなければできませんね。
今まで気づかなかった世界を見せてくれた
「FE 100mm F2.8 Macro GM OSS」
最後に紹介するのは「FE 100mm F2.8 Macro GM OSS」です。このレンズは私の世界を変えてくれました。実はマクロレンズはあまり使ってこなかったのですが、マクロの素晴らしさを知って、今、夢中になっているレンズの1つです。
このレンズを使えば、木にちょこっと生えている小さな木の芽にもストーリーを与えることができます。普通なら見逃してしまいそうな小さな木の芽がダンスをしていて、まわりが丸ぼけになってスポットライトのように見えたんです。こんなにきれいな画がマクロで撮れるんだ、と思って感動しています。
上の写真は彼岸花についた朝露の一滴を撮ったものです。このレンズは私が今まで気がつかなかったマクロの世界を教えてくれる。マクロの世界は無限なんだな、ということも感じています。
上の写真も由布院の金鱗湖で撮りました。寒さで葉っぱの上に霜が降りていたので、マクロレンズで霜を撮り始めたら、そこに鳥がパタパタと降りてきたんです。「FE 50-150mm F2 GM」につけ替えて撮ろうと思ったのですが、つけ替える暇がなくてマクロレンズのままで撮りました。マクロレンズでも決してマクロで撮る必要はないんですよね。100mmの単焦点レンズとしても使えますし、このレンズ、ピント合わせがめちゃめちゃ速いんですよ。
上の写真はAFで撮りました。αであればAFでもこういったシーンが撮れてしまうんですよね。逆光なのにゴーストやフレアも入らず、金鱗湖のもやと美しい光を写すことができました。まさかマクロレンズでこんな写真を撮るとは思っていなかったので、自分でもびっくりです。
これはシャッター速度を1/3200秒まで上げて、F16で撮影しました。右側の鴨が魚をくわえていますよね。奧の鳥は飛び立つ瞬間のしぶきまで写すことができました。「こんな写真が私にも撮れるんだ、しかも100mmのマクロレンズで」と本当に驚きましたし、感動でした。
こちらも同じレンズで撮っています。下を向くと太陽が映っていて、そのまわりのもやが虹色に輝いていたんです。そして黒い部分をご覧ください。とてもきれいですよね。G Masterは本当に黒が美しい。黒が美しいということは、色彩も美しいんです。この写真、宇宙のビッグバンみたいじゃないですか。マクロの世界は無限の宇宙も含まれるのかな、と空想してしまうような感動的な1枚が撮れました。ということで、今回はG Masterの美しい色を見ていただきましたが、いかがでしたでしょうか。皆さんにも、ぜひF2の世界を体験していただきたいですし、レンズの最高峰と言われるG Masterの世界も体験していただきたいと思います。最後までご清聴ありがとうございました。
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