
「カメラグランプリ2026」贈呈式リポート
2026年5月15日、カメラ記者クラブが主催する「カメラグランプリ2026」の各賞が発表され、ソニーの『α7 V』が新発売されたスチルカメラの中で最も優れたカメラとされる「大賞」を、『FE 50-150mm F2 GM』が「レンズ賞」を受賞し、2冠を達成しました。6月1日に行われた贈呈式では、ソニーの代表者が受賞の喜びと開発秘話を披露。カメラグランプリ実行委員の代表者に受賞理由や今後のソニーに期待することなどもお聞きしました。
贈呈式で語られた受賞の喜びと開発秘話
贈呈式では、カメラグランプリ2026実行委員長の大江航氏から「大賞」の賞状とトロフィーが授与されました。代表して受賞の喜びを語ったのはソニー株式会社 イメージングエンタテインメント事業部カメラ事業部門カメラビジネス部 統括部長 町谷康文です。
より幅広いお客さまに届けられるように目指したのは新時代の基準をつくるカメラ
『α7 V』はソニーのベーシック機にあたり、プロフェッショナルやハイアマチュアだけでなく、これからもっと撮影の腕を磨きたい、という多くの皆さまに対してもお届けするカメラです。最新の技術によって意図したとおりに写真や動画を撮影できる、つまり「偶然を必然にする」ことを可能にし、撮影する楽しさをより体感していただくことを目指しました。そのためにこのα7 Vが「新時代の基準をつくる」という高い目標を掲げました。
目標をクリアするために、イメージセンサーや画像処理エンジン、最新のAI技術など様々な開発テーマに取り組みました。結果的に開発期間がかなり長くなり、大変な時期を過ごしましたが、このような栄誉ある賞をいただくことができ大変うれしく思います。そして2025年12月に発売以降、大きな反響をいただきまして、非常に多くのクリエイターの皆様に使っていただけていることを幸せに感じます。これからもいただいた賞に甘んじることなく、クリエイターの皆さまと共に新しい映像表現を実現するようなカメラを世に出していきたいと思います。
苦労して実現した高いバランス性能。高性能と低消費電力の両立は大きな挑戦だった
開発秘話を披露したのは、技術センター商品設計第3部門 商品設計2部3課 α7 V商品プロジェクトリーダーの牛尾拓也です。
『α7 V』はより幅広いお客さまに使っていただくことを想定していたため、商品としてのバランスをいかに高いレベルで実現するか、という点に徹底的にこだわって開発を進めました。もっとも意識したのは、画質、スピード、AI認識といった主要性能を大幅に向上させながらも、他の性能を損なわないことです。この両立には非常に苦労しました。なかでも、高い性能と低消費電力といった相反する部分の両立が、このモデルでの大きな挑戦でした。『α7 V』にはAIプロセッシングユニットを統合した新開発の画像処理エンジンBIONZ XR2を搭載していますが、BIONZ XR2と、それを動かすソフトウェア、さらには電力を供給する電源回路を密に連携させることにより、極めて高いレベルで性能と低消費電力の両立を実現できました。苦労して実現した高いバランス性能を評価していただき、多くのお客さまに使っていただけたことを、開発者としてとても幸せに思っています。今回の結果に満足することなく、これからもよりお客さまに満足いただける商品を開発していきたいと考えています。
50-150mmという焦点域にこだわりながらも小型軽量と高い解像感を実現した夢のレンズ
続いて、「レンズ賞」の贈呈が行われ、賞状とトロフィーが授与されました。代表してソニー株式会社 レンズテクノロジー&システム事業部 事業部長 岸政典が喜びの声を語ります。『FE 50-150mm F2 GM』は先に発売している『FE 28-70mm F2 GM』と同様に、「焦点距離を変えられる単焦点レンズをつくる」という思いで開発したレンズになります。F2クラスのズームレンズとなると、どうしても大きく重たくなってしまい、普段使いできなくなってしまうのが一般的ですが、今回はF2のズームレンズでありながらどれだけ大三元レンズのように普段使いできるようにするか、というところが非常に大きなチャレンジでした。
小型軽量を実現するために、当初は「テレ端は135mmが限界ではないか」という話もありましたが、すでに『FE 135mm F1.8 GM』という単焦点レンズがあるため、「このレンズでなければ表現できない領域までテレ端を伸ばそう」ということで、サイズを大きくせずに150mm化を行い、このスペックを実現しました。また、ワイド端も、当初は28-70mmがあるので「70mmスタートでいいのではないか」という意見がありつつも、やはり「焦点距離を変えられる単焦点」と謳うからには、この1本でどれだけの単焦点レンズ領域をカバーできるかというところが非常に重要になる。50mm F2の焦点距離をカバーすることで、1本のレンズで表現できる幅が一気に広がるという思いから、最終的に50-150mmというスペックを選びました。さらに開発陣にお願いしたのは、「F2ながらF2.8の解像力を開放から出す」という非常にハードルの高い要求です。開発陣は本当に多くのチャレンジをして、これまでにないような光学レイアウトを採用して夢のレンズをつくってくれたと思いますし、こんな開発メンバーがいることを、私自身、とても誇りに思います。
発売すると、AFの速さからスポーツ、報道、ウェディング、ポートレートなど、さまざまなジャンルのフォトグラファーの皆様から称賛の声を多くいただきました。ある方からは「カメラがミラーレスに変わったくらいの衝撃を受けた」、「レンズのゲームチェンジャーだ」といったことをおっしゃっていただき、本当にうれしく思っています。G Masterレンズは今年で10周年を迎えました。ひたすらチャレンジを続けてレンズの技術を徹底的に進化させて、今までになかったようなレンズをつくってきた歴史があります。とはいえ、長いカメラの歴史の中で10年はさほど長くはなく、G Masterブランドとしてはまだ産声を上げたような状態です。これからも長く続くカメラ史の中で、G Masterブランドが多くの人に愛されて信頼をいただけるブランドに育つように、開発とともにチャレンジを続けていきたいと思います。
技術力不足からの多くの挑戦を乗り越え各部の精度を一段上げて完成させた自信作
開発秘話は技術センター 商品設計第5部門 部門長 中西仁が語ります。
岸からも、50-150mm F2通しというユニークなスペックで開発が難しかったという話がありましたが、実は、私たちがこの設計をする時点では技術力がまったく足りていませんでした。これを実現するためには、今まで使っていたXAレンズを1段上のクラスの高精度にして、アクチュエーターのリニアAFに関してはハードウェアもソフトウェアも進化させなければならない。さらに、組み立てる精度も一段上のレベルでなければ実現できなかったため、設備、プロセスなど、製造のところをすべて一からつくり直さなければならなかったのです。それらをすべてクリアし、多くの苦労を重ねてつくり上げたレンズ、実は静止画だけではなくインナーズームで静音という特徴もあるため動画にもご活用いただけます。さまざまなシーンで使うことができるので、これからも多くの方に手に取っていただき、新しい体験を楽しんでいただければと思います。さらに、フィードバックをいただければ我々はさらに進化することができ、新しい体験をさらに積み重ねることができるので、ぜひ声を聞かせてください。そして、イメージング業界全体のさらなる発展にも貢献させていただきたいと思っていますので、皆さん、一緒に頑張っていきましょう。
成熟して総合的に性能がアップした『α7 V』。レンズは被写体を選ばない万能性と高い描写力を評価
続いて、カメラグランプリ2026実行委員長の大江航氏(雑誌『フォトコン』)、カメラ記者クラブ代表幹事の柴田誠氏(TIPA)のお二人に、受賞理由についてお聞きしました。――『α7 V』がカメラグランプリ2026大賞を受賞しましたが、どのような点が評価されて獲得できたと思いますか?大江:選考委員からは、16ストップのダイナミックレンジや秒間30コマのブラックアウトフリー連写など、総合的な性能が評価されていて、プロの機材としてしっかり使うことができる、という意見が多くありました。α7シリーズはソニーのミラーレス機の中でもベーシックモデルの位置づけですが、本当にベーシック、標準というところを完全に底上げしている。さらに高性能なα9シリーズや高画素のα7Rシリーズと比較しても遜色がないので、ベーシックモデルとして総合的にレベルアップしたことに驚かれている選考委員も多かったです。
柴田:ベーシックモデルとしては5代目になって完成度がさらに上がり、使いやすさが一気に向上した印象です。液晶モニターが4軸の可動式になったり、ファンクションボタンが増えていたり、インターフェースが変わって縦位置でも使いやすくなっていたり。そういった細かいところがスペックアップしたことも評価に繋がったと思います。α7Rシリーズほどの高画素は必要なく、α7Sシリーズのような高感度も不要、というユーザーが圧倒的に多いと思うので、そういった方が使いやすいモデルに仕上げたことも好印象でした。――レンズ賞もソニーの『FE 50-150mm F2 GM』が受賞しましたが、こちらについても評価された点を聞かせてください。大江:ポートレートの写真家の方から「こんなレンズを待っていた」という声を聞きました。50-150mmというズーム域を持ちつつもF2通しなので、ポートレートでも様々な表現に取り組むことができますし、G Masterレンズのクオリティで撮ることができる。それだけに待望されていた方が多かったのではないかと思います。描写や解像感も「単焦点レンズを使っているような感覚で使える」という意見が多くありました。使い勝手、描写性能という点においては非常に評価が高かったです。柴田:F2という明るいレンズでこのサイズ感は大きな魅力だと思います。焦点距離は50-150mmですから、大三元と呼ばれているレンズとは少し違った組み合わせができるようになったのではないでしょうか。とくにソニーからは100-400mmのレンズも発売されているので、150mmまでの焦点距離と組み合わせればより使い勝手がよくなると期待しています。標準として50-150mmがあると望遠の100-400mmがより生きるのではないかと。特殊なレンズ硝材を使ってつくられていますから、描写性能については本当に文句なしです。
層の厚い商品群と展開の速さがソニーの魅力。卓越した技術力で攻めた商品にも期待したい
――ソニーが大賞とレンズ賞の2冠を達成したのは2度目であり、近年も連続受賞が続いていますが、この状況をどう思いますか?大江:レンズ、ボディともにコンスタントに商品を出されているところが連続受賞に繋がっているのだと思います。αシリーズだけでもコンパクトなもの、高性能なもの、動画向けのものなどをリリースしていて、商品数も商品層の厚さも他社にはない魅力です。そういったことからも、今後も「ソニーはどんなものを出すんだろう」と多くの人が期待していますし、選考委員からは各賞の選択肢としてあって当たり前、という認識になってきているのだと思います。柴田:次々と新製品を出してくる展開の速さは、ソニーが持っている技術力の強みだと思います。受賞した商品以外に『FE 100mm F2.8 Macro GM OSS』も良かったですし、こういった商品を出せる技術力が今後の期待感にも繋がっています。――受賞したカメラやレンズについて、プロのカメラマンなど周囲からはどのような声が聞かれますか?大江:弊社で懇意にしているポートレートをメインに撮影されているフォトグラファーに、『フォトコン』の誌面で『α7 V』と『FE 50-150mm F2 GM』の組み合わせについてのレビュー記事を書いてもらうにあたり、使った感触を聞いてみたところ非常に感激されていました。欲しいところに素早くピントを合わせてくれて、屋外でも、スタジオでも印象的なポートレートを撮ることができる、と。焦点距離や被写界深度をどう設定しても理想通り、理想以上の描写をしてくれると言っていて、現場でプロとして活動されている方々にも高く評価されていることを実感しました。
柴田:僕はTIPAのメンバーで『TIPAワールドアワード』の選考にも携わっています。直近では『α7 V』が「ベストフルフレームエキスパートカメラ賞」を、『FE 50-150mm F2 GM』が「ベストフルフレームテレフォトズームレンズ賞」を獲得しました。TIPAアワードでは40のカテゴリーでそれぞれに優秀な製品を選びますが、そういったところでも受賞しているということは、世界的に評価されているカメラやレンズといえます。――今後、ソニーにはどのようなことを期待していますか?大江:今年度に入ってからも、すでに『FE 100-400mm F4.5 GM OSS』や『α7R VI』を発売していて、今まで通りスピード感をもって展開されると期待しています。ソニーは層の厚い商品展開をしていますので、その系譜の後継機は引き続き展開してもらって、さらに変化球で違うところから攻めたような新しいカテゴリーの新製品にも期待しています。柴田:レンズに関しては50-150mmといったユニークな焦点距離の商品も出てきていますし、100マクロなどの高性能で王道かつスタンダードな焦点距離のレンズもあるので、次はどんな商品を出してくるのか、といった期待感があります。今までのように標準的な焦点距離でない、高倍率レンズなども見てみたいですし、今の潮流である大口径ではどんなレンズを出してくるのだろう、と楽しみにしています。カメラに関してはだいぶ完成度が高くなっているので、ここから何をやってくるのか注目しています。機能面で今以上の性能を求めているユーザーは少ないと思うので、数字では見えない部分、例えば使い勝手の良さなどが向上していくのではないでしょうか。一眼レフの時代はシャッター音にこだわったメーカーもあったので、そういった感覚的なところも進化していったらいいなと思っています。大江:たしかにそれはありますね。『フォトコン』読者は年配の方が多く、やっとミラーレスに乗り換えた、という方がいますが、長年、一眼レフを使っていたユーザーにとっては性能には大いに満足している一方、シャッター音が物足りない、カメラを使っているという実感が少ない、という意見もあります。そんな方に向けて、撮影時の体験や使い勝手の良さを追求すると想像以上に刺さりそうな気がします。
カメラグランプリとは
写真・カメラ専門の雑誌・Web媒体の担当者の集まりであるカメラ記者クラブが主催し、カメラグランプリ実行委員会の運営のもと1984年から開催されており、組織された選考委員が1年間(毎年4月1日から翌3月31日まで)に日本国内で新発売されたスチルカメラ・レンズ・カメラ機材の中から各賞に値するカメラや撮影機材を選出します。各賞は、最も優れたカメラ1機種を選ぶ「大賞」、交換レンズの中から最も優れた1本を選ぶ「レンズ賞」、一般ユーザーがWebサイトから投票する「あなたが選ぶベストカメラ賞」「あなたが選ぶベストレンズ賞」、大賞・レンズ賞を受賞したカメラを除くすべてのカメラと写真製品・機材を対象に大衆性・話題性・先進性に特に優れた製品を選ぶ「カメラ記者クラブ賞」の5部門があります。
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