商品情報・ストアヘッドホン The Headphones Park 開発者インタビュー XBAハイブリッドタイプ 開発者インタビュー PART1

Engineer's Interview XBA ハイブリッドタイプ 開発者インタビュー PART1

BAドライバーとダイナミックドライバーの
ハイブリッドで目指したものとは

取材:藤本 健

ダイナミックドライバーユニットとバランスド・アーマチュア・ドライバーユニット2基を組み合わせた、ハイブリッドの密閉型インナーイヤーヘッドホン、XBA-H3をソニーが開発した。ダイナミックドライバーの豊かな低域とBAドライバーユニットによる高解像度のまさに「いいとこどり」で、ハイレゾ再生を実現している。でも、大きさも構造もまったく異なるドライバーユニットの組み合わせを、どのように行っているのだろうか?その背景についてXBA-H3の開発担当者に話を聞いてみた。

BAの解像度の高さと、
ダイナミックの豊かな低域の両方が欲しい

大里祐介氏

ソニー ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 V&S事業部・サウンド1部 MDR設計1課 大里祐介氏

2011年、満を持してソニーが発売したバランスド・アーマチュア・ドライバーユニットを搭載したインナーイヤーヘッドホン、XBAシリーズ。ドライバーユニット自体もソニー自身が開発した完全独自設計であったこともあり、大きく話題になるとともに、大ヒット製品となった。とくにクリアな中高域が評価されたのだが、その一方で、以前からあったダイナミックドライバーユニットを採用したEXシリーズにも注目が集まった。それはダイナミックドライバーユニットがバランスド・アーマチュアユニットのものより更に、低域がしっかり出るパワフルさを持っていたからだ。
「それなら、BAドライバーユニットとダイナミックドライバーユニットを組み合わせれば、さらにいい音のヘッドホンができるのではないかと思うようになったのです」と話すのは、XBA-H3の開発も担当したV&S事業部・サウンド1部 MDR設計1課の大里祐介氏だ。

原理試作機

原理試作機

とはいえ、本当にいい音になるのかは、実際に音を出してみないことには分からない。そこで、まずは装着性などは考慮せず、とにかく音が出る原理試作機の開発に取り組んだのだ。
「XBA-H3を開発する際、BAだけのマルチウェイを作ったわけですが、どう組み合わせればいいのか難しく苦労しました。しかしハイブリッドとなると、組み合わせのパターンが遥かに多いため、さらに難しい作業となりました。音の調整はできていなかったものの、原理試作機で音を聴いてみると、BAよりもパワーがあり大きな可能性を感じたのです」と大里氏は振り返る。2012年6月に原理試作機ができてから、XBA-Hシリーズの実質的な開発がスタートしていったのだ。

音作りは0.1mm単位で配置を変える微調整の攻防

口径

大きな口径で大音量が出るダイナミックドライバーユニットと、四角い箱型の構造のBAドライバーユニット、単純に並べるだけでも結構な大きさになってしまう。そこで、装着性を向上させるためにも、まず行ったのがダイナミックドライバーの薄型化だ。  液晶ポリマーフィルム振動板を採用し、高剛性と広帯域にわたる高い内部損失を両立した基本的構造は維持しつつ、口径が16mm、13.5mmの薄型ユニットを用意。それと小型の9mmユニットを用意。それらをBAドライバーユニットと組み合わせる3通りのモデルを開発していったのだが、大里氏が担当したのは一番大きい16mmのXBA-H3。
「XBA-H3は16mmのドライバーユニットと2つのBAドライバーユニットを組み合わせた音作りだったのですが、特にトゥイーターユニットは配置を0.1mm、0.2mm変えるだけで、音が劇的に変化してしまうのです。ダイナミックの中低域をうまく引き出しつつ、BAの繊細な中域・高域をマッチさせるには、どうすればいいか、試行錯誤の連続でした」と大里氏。

もちろんドライバーの配置だけでなく、イヤーピースとの位置関係、また音響抵抗材もさまざまなものを比較しながら作りこんでいったという。

付属イヤーピース

付属イヤーピース (上段)シリコンフォームイヤーピース3サイズ、
(下段)ハイブリッドイヤーピース4サイズ

今回イヤーピースに関しても改良を加えており、シリコンフォームイヤーピースを採用している。イヤーピース内部に発泡シリコン材料を使用することで、より高い装着安定性と遮音性を実現している。このこともまた、音質向上に大きく寄与しているのだ。 (写真上段がシリコンフォームイヤーピース。イヤーピース内部の赤い部分が発泡シリコン材料である。下段はハイブリッドイヤーピースとなる。今回はこの両方が付属品として同梱している)

ビートレスポンスコントロール

重低音のリズムを正確に再現するビートレスポンスコントロール

またXBA-H3の音作りの上で、一つのポイントとなっているのが、ビートレスポンスコントロールというもの。これは低域の過渡特性を改善し、リズムを正確に再現するシステムだ。具体的にはダイナミックドライバー背面に直結した極細の音響負荷チューブで振動板の動作を最適化している。大里氏は「もともとソニー・ミュージック エンタテインメントとのコラボで音つくりをすると聞いて、ヘッドバンドタイプのMDR-1シリーズで採用した原理を採用できないかと考えました。そして、いろいろと試行錯誤してたどり着いたのが、Φ16ダイナミックドライバー専用に設計した今回の構造です。MDR-1シリーズと同様にロンドンのスタジオで、マスタリングエンジニアやミュージシャンの助言も受けながら調整を行い、クラブミュージックの最新のベース音の音トレンドにも対応するように作り込んでいます。キックドラムやEDMのベース音など、低域での立ち上がりや立ち下がりが非常によくなっているので、ぜひその点を確認いただけると嬉しいですね」と話す。

HDスーパートゥイーターで実現したハイレゾサウンド

XBA-Hシリーズは、XBA-H1、H2、H3とも、XBAシリーズで使ったフルレンジBAドライバーユニットをそのまま使っているが、XBA-H3のみは、フルレンジBAのほかに、新開発のHDスーパートゥイーターというBAドライバーユニットが使われている。より高域まで正確に再現できるドライバーユニットを採用することで、ハイレゾ音源の再生に対応させようと、開発を行ったのだ。
従来のドライバーとの最大の違いは、振動板にステンレスではなくアルミを採用したこと。高い周波数を出すためには、振動板を軽くしたいが、同じ素材で行えば薄くするしかない。しかし薄くすると剛性が低くなってしまう。そこで素材をアルミに変え、軽くしながらも厚みも出すことで、バランスを取っているのだ。
ただ、予めHDスーパートゥイーターができていたわけでなく、XBA-H3の開発と並行してドライバーユニットのほうも開発を行っていたため、まさに綱渡りの製品開発になったようだ。
「スケジュール的にギリギリなタイミングでの開発であったため、当初は従来のXBAシリーズで使っていたトゥイーターを利用しながら音作りを進めていました。かなりいい音に仕上がってきていたところに、HDスーパートゥイーターが完成したので、これに差し替えたところ、どうにもうまくいかなかったのです」と大里氏は当時について語る。
結局、ドライバーユニットの開発チーム側と何度もやり取りをしてドライバーユニットの振動板の剛性の微調整を行って改善した結果、最終的にはレスポンスが向上し、ハイレゾ対応ヘッドホンとしての完成度も上がったのだ。

丸と四角でハイブリッドを表現する

大田潔氏

ソニー クリエイティブセンター パーソナルオーディオデザインチーム1 大田潔氏

ヘッドホンを設計する上で、技術面と同様に重要なのがデザイン面。見た目をよくするのはもちろんだが、装着性を向上させ、気持ちよくフィットさせることで、音質も向上するため、デザインは音作りの面でも大きな意味を持つのだ。XBA-H3の設計において、そのデザインを担当したのがソニー クリエイティブセンター パーソナルオーディオデザインチーム1 の大田潔氏だ。

XBA-H3

「音質を損なわないようにしつつ、装着性をよくするのは大前提として、今回のXBA-H3はダイナミックとBAの組み合わせということで、まさにソニーのインナーイヤーの集大成的なものです。だからこそ、見てすぐにソニーのインナーイヤーであることが分かるようにすると同時に、丸いダイナミックと四角いBAという特徴的な形を前面に打ち出したデザインにしようというコンセンサスを得て進めていきました」と大田氏は語る。
もっとも各ドライバーユニットの大きさを考えれば、無駄な肉付けをするような余裕はなく、しかもケーブルを着脱式にしているため、そのためのコネクタの容積も喰う。
「となると、音質優先でありつつ、デザインとしても魅せられるよう、各ユニットの位置関係、離す距離などを設計とさんざんやりとりしながら、『ここでなきゃダメ』というところまで追い込んでいきました」と開発当時を振り返る。
また、もうひとつの重要ポイントである、「気持ちよく装着できるか」という面では、音導管の位置を0.1mm単位で動かしながら調整していったのだ。また表面は製品としての顔となるので、光沢仕上げをしているが、裏側は肌に馴染みやすいように半ツヤ消しを使っている。さらに、耳かけとしてハンガー部分は、装着性をよくするために形状記憶樹脂の「テクノロート」を芯材に使用してそれを肌触りの優しいシリコンで覆うなどの工夫をしている。

XBA-H3

XBA-H3

XBA-Hシリーズ3製品の中で、唯一、耳かけタイプとなっているのがXBA-H3だ。 「やはりダイナミックドライバーユニットとBAドライバーユニット2基の計3つがは入っているだけに、大きさ・重さともに大きくなってしまいます。それを自然に装着してもらうには、耳かけを採用するのが重要だと考えました。またXBA-H3は最高音質のものであるだけに、外れることを気にせずに音楽を楽しめるようにという考えからも耳かけにしています」と大田氏は解説する。
また色は右が赤、左がシルバーかグレーというのがソニーの伝統的な配色。XBA-H3でもその伝統に則った色を使いつつ、コードには赤と黒の両方を使ったのは、これが最高峰モデルであることを示すためだという。
「MDR-1シリーズなど、ソニーの音質重視の最高峰モデル群は、これまでも製品そのものに赤を使ってきています。同様にXBA-Hシリーズも、コードを赤と黒の2トーンにすることで音質重視のハイブリッドモデルである事を表現しています」と大田氏。

このようにして、技術面、デザイン面の両方から最高の音質に仕上げてきたハイブリッドのインナーイヤーヘッドホン、XBA-H3。ハイレゾ音源を楽しむ上でも、これまでにない高品位なサウンドを実感できるはずだ。

  • 次のページ
  • The Headphones Park Top
  • Engineer's Interview一覧

商品情報

密閉型インナーイヤーレシーバー

XBA-H3

独自開発HDハイブリッド3ウェイドライバーユニットを搭載。深みのある重低音から高域の余韻まで豊かな広帯域再生を実現

RELATED CONTENTS 関連コンテンツ

  • 月刊 「大人のソニー」
  • ソニーストア
  • Walkman
  • ヘッドホンの歴史
カタログPDFダウンロード
ヘッドホン サイトマップ