商品情報・ストアヘッドホン The Headphones Park 開発者インタビュー MDR-Z1R 開発者インタビュー PART2

MDR-Z1R 開発者インタビュー

新素材を投入して、新たに設計した振動板。
70mm大口径からの音を生かす
グリルパターンも斬新。

――ドライバーユニットについてお聞かせください。

潮見:振動板は、中心にマグネシウムドーム、その周囲のエッジにアルミニウムコートLCPを使った複合的な構造をしています。今回、ハイレゾならではの高域再生を可能にした一番のポイントは、振動板に使う「マグネシウムドーム」が完成したことです。ドームとエッジは、それぞれに求める動きが異なります。ドームはたわまず動いてほしい。一方、エッジは適度な柔軟性が求められます。マグネシウムは軽量でありながら剛性が高く、内部損失も大きいため、ドームとしては理想的な材料なのです。なぜドームに軽量性が必要なのかと言うと、より軽いほうが高い帯域を出せるからです。一般的に軽量で高剛性のものを「音速が速い」という言い方をするのですが、マグネシウムはボイスコイルからの振動を、ものすごく速く伝えられるんです。動きが発生する振動系のパーツが重いと、駆動させるために必要なパワーがより大きくなってしまいます。全体的に軽い必要があるので、ボイスコイル自体も軽量化のための工夫をしました。ヘッドホンはスピーカーと違って、入力できる電圧もかなり限られていますから。

尾崎:軽量化のためには、より薄く造りたい。しかし、マグネシウムは延びがいい素材ではないため、薄くするのも、それをドーム状にプレスするのも簡単ではありません。1990年代後半から研究を重ね、ようやく2013年に試作品ができました。そこから商品化できるまでに、さらに3年かかっています。 マグネシウムドームの製造において、30μm(ミクロン)という薄さで、破れないようにこの形状へと絞りあげるためには、特殊な機械と職人的なスキルが求められます。さらに私たちの強みとして、ソニーには振動板の開発チームがあり、何年も先を見据えて振動板を素材から開発しています。

――エッジの方は適度な柔軟性が求められる、と言われましたが。

潮見:エッジはある程度の剛性が必要ですが、基本は稼動させる部分ですので、しなやかさが重要です。振動板の材料には、通常はPETフィルムを使うのですが、Z1Rのエッジには、より内部損失が高いアルミニウムコートLCPを使っています。ポイントはアルミニウムをコーティングしていることです。本来、材料は複合材のほうがいい。それは、単一の素材で製作するとその素材の特性が強く出てしまい、特定の帯域で共振したり強調されたりするからです。異なる素材を貼り合わせると、お互いの共振点が相殺され、ある部分だけが強調されるようなことがなくなり、よりフラットな特性になる効果があります。

――マグネットのサイズについても詳しく聞かせてもらえますでしょうか。

潮見:一般的に入手できるものの中で一番磁力の強い、最高級グレードのネオジウムマグネットを使用しています。このマグネットは磁力を可能な限り高めるため、従来とは異なる横磁場成形という製法のものを使用しています。しかし、この製法では大きなマグネットの塊を作ることができない。そこで、半円ずつに分けて製作し、合わせて円状に使うことを思いつきました。このため、より強い磁力を得られ、ハイレゾソースに含まれる微小音の信号にも、ボイスコイルが機敏に感応することができます。

――そして、大きいと言えばφ70mmドライバーユニットですが。

潮見:一般的な人の耳のサイズは、縦が平均65mm程度なので、このユニットの方が大きいわけです。耳より大きなサイズの振動板から音が発せられることで、普段、自然と耳にしている平面波に近い効果が得られ、リアルな音場感を出すことができます。50mm、40mmサイズのドライバーユニットでは、同じような特性になるよう調整しても、聴こえ方が違うと実感します。これは空気感の実現にかなり影響がある要素の1つです。 また、大きな音を再生する場合には、大量の空気を押し出す必要があります。大口径であるほど振動板のストロークが小さくて済み、変形量も小さい。そのため、リニアリティが高く、低歪で、より自然な音を出すことができます。

――グリルのパターンが、すごく特徴的ですね。

尾崎:グリルは振動板の保護が第一の目的であり、強度や剛性という意味では従来の形状が理にかなっていました。ただし、強度上は必要なことですが、桟(さん)が太く、わずかですが音の遮蔽要因になっていました。

潮見:高域や微小音の再生を追い求めていくと、特定の周波数に対してわずかに影響があり、音に不要な色付けをしていることが分かったのです。そこで、既存のグリルパターンを見直し、高い開口率と強度を両立できるパターンを検討している中で、デザイナーと話をして、このパターンを形にしていきました。

矢代:「自然界に存在しているパターンを使って、効率よく遮蔽を逃げられないか」という発想がわき、その中でフィボナッチ数列というものに着目しました。設計チームにフィボナッチ数列を基にしたパターンをいろいろと試してもらい、できたのがこの曲線パターンです。巻き貝の曲線などもこの数列でできているのです。プロテクターがない状態とある状態で、ほとんど音に差異がありません。

尾崎:桟(さん)も可能な限り細くするために、特殊な高剛性樹脂を採用しています。剛性と強度が高い一方で、成形が難しい材料になりますので、音響シミュレーションと強度シミュレーションに加え、成形シミュレーションも駆使してこの形状を割り出しています。

潮見:音響についてはシミュレーションだけでなく、すべて実際にパーツをつくって測定しました。もちろん、聴感における効果が一番重要で、実装して“聴く”ことも繰り返しています。

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商品情報

ステレオヘッドホン

MDR-Z1R

音の立体感や微小性といった「空気感」を、これまでにないレベルで体験できるフラッグシップモデル

Signature Series
ハイレゾリューション・オーディオ(ハイレゾ)対応のウォークマン® WM1シリーズ2機種、ステレオヘッドホン『MDR-Z1R』、ヘッドホンアンプ『TA-ZH1ES』。構造も素材も従来の常識にとらわれることなく高音質を追求。アーティストが伝えたい音楽の感動や空気感を再現しています。ヘッドホンによる音楽体験を"聴く"から"感じる"領域へ革新するSignature Series (シグネチャー・シリーズ)。
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